香港基督教協進会(HKCC)の常議員会は9月30日、「現在の政治状況に照らした声明」を公式サイトに英語と中国語で発表し、香港の現状と未来のために共に祈ることなどを強く呼び掛けた(下に声明全文)。
香港では、1997年の中国への返還以来、一国二制度であるはずだが、中国の全国人民代表大会(全人代)は8月31日、2017年に行われる香港の行政長官選挙で中国本土政府の意向に沿わない候補者を排除する制度改革の決定を発表した。
これに対し、普通選挙による香港の民主化を求める学生などの若い世代をはじめとした香港市民の大規模な抗議活動が行われている。香港警察はこれを催涙弾を使うなどして力で抑え、逮捕者や負傷者が出ている。
改革教会世界連盟(WCRC)の加盟教会である中華基督教会香港区会も29日、「中華基督教会香港区会 強い非難と訴え」と題する声明文を公式サイトに英語と中国語で発表し、その前日に武装していない抗議行動の参加者たちに不相応な暴力を使ったことを強く非難した。
一方、香港カトリック教区主教の湯機枢機卿は29日、「中環占拠」に関する緊急アピールを発表し、「香港で対立している勢力同士の和解のために、そして私たちの社会の平和と福祉のために祈り続けるよう」求めた。中環(セントラル)は抗議活動家たちが占拠している、国際金融の中枢をなす金融街で、香港中西区にある香港島北岸の一地域。
本紙によるそれぞれの声明の日本語訳(非公式)は次の通り。
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HKCC「現在の政治状況に照らした声明」
全国人民代表大会(全人代)常務委員会による、2017年の香港特別行政区の行政長官の選挙の枠組みに関する決定が通過した後、憲法上の大きな争議が続き、それによって過去3日間にわたって大規模な抗議行動を引き起こしました。本会は、武装していない示威運動の参加者たちに対して過度な武力が警察によって行使されたことに、驚きと憂慮を深く感じています。
本会は次のことを強く要求します。
- 政府は、武装していない示威運動の参加者たちに対し、殺傷能力を持つ武器の使用に依拠すべきではありません。
- 政府は、真の普通選挙に向けて、政治的意見が異なる人々との対話に取り組み、彼らの意見に耳を傾けるべきです。
本会は次のことを真剣に呼び掛けます。
- 示威運動の参加者たちは、平和的な抗議の原則を固く守るべきです。
- 香港にある全ての教会は、示威運動の参加者たちの安全と、香港の現在の状況と未来のために祈ることで一致すること。警察が法の執行における自制を示すよう、政府が理性をもって対立を処理するよう、香港の全てのクリスチャンが正義と平和をもって香港の市民と共に歩む姿勢を堅持し、主の御心にかなう社会を築き上げるよう、共に祈りましょう。
2014年9月30日
香港基督教協進会常議員会
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中華基督教会香港区会 強い非難と訴え
本会は、香港警察が昨日、武装していない抗議行動の参加者たちに不相応な暴力を使ったことを強く非難し、ここに次のことを訴えて強く要求します。
- 警察は殺傷能力のある器械を抗議活動家たちに対して使うのを止めること。
- 香港特別行政地区(SAR)の政府は、真の普通選挙を求めている多くの香港市民の訴えに注意深く応えること。
- 普通選挙を求めている全ての団体や個人は、愛と平和をもってそうすることを続けること。
- 本会の信徒や牧師が香港と傷ついた人たちのために祈り続け、欠乏のうちにある人たちの世話をし、本会の学校教師や奉仕団体の職員と並んで、誠と愛をもって自らの義務を果たし、キリストの自己犠牲の精神を実践すること。
本会は聖書の教えを保ち、信仰を実践し、義と憐れみのうちに、へりくだって主や香港市民と共に歩むことを約束します。
2014年9月29日
中華基督教会香港区会常務委員会
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「中環占拠」に関するカトリック香港教区の緊急アピール
過去数日間に起きた中環や金鐘(アドミラリティ)および湾仔(ワンチャイ)での遺憾な出来事に関して、私は、若い世代や市民各層の声に耳を傾けるべく、市民の身の安全を重視し、暴力の使用を避けるよう、香港政府に切に呼び掛けます。私はまた、自らの不満を声に出そうとしている人たちが皆、冷静さを保ち続けるよう、心から望みます。意志あるところに道はあるのです。
クリスチャンとして、私たちは創造主としての神が共にいてくだされば、世界にはいつも希望があるのだと信じます。ですから、私は全てのクリスチャンに対し、香港で対立している勢力同士の和解のために、そして私たちの社会の平和と福祉のために祈り続けるよう求めたいと思います。