2007年12月にインド南東部オリッサ州のカンダマル地区で起きた暴動で被害を受けた多くの教会は、外国から十分な資金を得ているから補償を受ける権利がないとする判決を、同国の最高裁判所が17日に下した。同国カルカッタの英字紙「テレグラフ」や、アジアのカトリック・ニュースメディアのインド版「ユニオン・オブ・カトリック・アジア・ニュース(UCAN)・インディア」などが報じた。
首席弁護人のコリン・ゴンザルべス氏は、教会は暴徒たちによって被害を受けたのだから、オリッサ州がその補償をするべきだと主張していた。しかし、H・L・ダットゥ裁判長は、「そんな願い事はやめなさい。オリッサ州はそんなに裕福ではないのだから」と述べたという。
これについて、インドのキリスト教ジャーナリストでカトリック信徒のアント・アッカラ氏は、本紙に対し、「カンダマルで被害を受けた教会のための補償を求めているのに、私は最高裁の見解に重大な疑問を持っている」とメールで語った。アッカラ氏は、『Kandhamal : A Blot on Indian Secularism(カンダマル:インド世俗主義の汚点)』(Media House)、『Shining Faith in Kandhamal(カンダマルの輝かしい信仰)』(Asian Trading Corporation)、『Kandhamal craves for Justice(正義を求めるカンダマル)』(Veritas India Books)、『Early Christians of 21st Century - Stories of incredible witness from Kandhamal jungles(21世紀の初期キリスト教徒たち―カンダマルのジャングルからの信じられない証しの物語)』(同)などの著書による調査報道で、昨年、国際キリスト教メディア機構(ICOM)からジャーナリズム国際人権賞を受賞している。
アッカラ氏は、「もしインドの政治家がそれ(ダットゥ裁判長の発言)を言ったのなら分かる気もする。しかし裁判官、しかも最高裁の裁判官が言うべきことではない。市民の命と財産を保護するのに失敗したオリッサ州政府に任務を負わせるのが裁判官なのだから」と述べた。
アッカラ氏の著書によると、カンダマルでは2007年のクリスマスに、100を超える教会が神聖を汚され、キリスト教施設が略奪、破壊され、数百もの家屋が丸焼けにされたという。
それによると、これらの攻撃はヒンドゥー教原理主義者の一味によって主導された。また、それは山岳地帯で40年間キリスト教に対するしつこい運動を行なってきた彼らの指導者であるスワミ・ラクシュマナナンダ・サラスワティ氏(81)を、キリスト教徒たちが「攻撃」したという噂に基づくものだという。
アッカラ氏によると、教会やキリスト教団体はサラスワティ氏が殺されたことを即座に非難したが、ヒンドゥー教国家主義者の諸団体は、その殺人がキリスト教徒による共謀だと断固として譲らなかったという。
この暴動の結果、カンダマルのキリスト教徒たちは、オリッサ州政府の統計では38人、複数のキリスト教団体によると100人が殉教した。放火犯たちはカンダマル地区に7654キロ四方にわたって広がる約2300の村々のうち、415の村でキリスト教徒たちを標的として略奪を行なった。このインド史上最悪のキリスト教徒に対する迫害で、同地区にいた11万7千人のキリスト教徒のうちの半数近くが住む家を失ったという。
ヒンドゥー教原理主義者たちから信仰を捨てるよう迫られたにもかかわらず、彼らの多くは輝かしい信仰を貫き通し、信じられぬほどの証しを立ててきたと、アッカラ氏は著書の中で述べている。
アッカラ氏によると、カンダマルのキリスト教徒たちがヒンドゥー教原理主義者たちに対し補償を求めて裁判で訴えたことはないという。
「インドの法制度では、宗教に関する暴力は攻撃してきた相手を一人の人が裁判で訴えることができる民事事件としては扱われない。不当な扱いを受けた市民が提訴する場合でさえも、そのような刑事訴訟を追求できるのは政府だけである。だから、ヒンドゥー教原理主義者たちからの補償を求めることはできない。そのような事件で補償を施すことができるのは州だけだ」とアッカラ氏は説明した。
「裁判官があの衝撃的な発言をしたのはその補償をめぐる事件だった」と、アッカラ氏は付け加えた。