社会がこれまでになく聖書への信憑性を問う今日、ヤングアダルトとよばれる10代後半以降の若者たちの間で、キリスト教神学の一分野である「弁証学(apologetics)」への関心を見せる動きが出てきていると、ヴィンテージ・フェイス教会(米カリフォルニア州サンタクルーズ)で教育と宣教ミニストリーのリーダーを務めるダン・キンボール牧師が語る。
キンボール氏の教会は主に大学生で構成され、これらの世代に聖書の教義と神学を植え付けることを喫緊の課題としている。これらの世代にとって信仰生活は教会に行くだけでは不十分で、クリスチャンは何を信じていて、なぜ信じるのか、ということをはっきりさせる必要がある。
「聖書の物語を知らない人が多く、聖書の内容を誤解して記憶している場合が多々あります。またクリスチャンは嫌味ったらしい、イエス様は宗教的な教師の一人に過ぎないとか、聖書の神は嫉妬深い凶暴な神の一つだ、などと捉えられている場合も珍しくありません。このような間違ったイメージを払拭し、聖書が本当に言及していることと、言及していないことをはっきりさせるためにも、弁証学を用いた教えを積極的に示していくべきです」と、サイト「Church Leaders」の記事の中でキンボール氏は述べている。
キリスト教弁証学研究ミニストリーによると、弁証学とは「キリスト教の信仰において、合理的な防衛を与えるキリスト教神学の一つ」。言い換えれば、つまりそれは異端の意見や異議に対抗して、キリスト教の信仰を守るという考え方である。
弁証学は、時に複雑な神学のトピックを掘り下げ、徹底的に追及するが、キンボール氏は、若い世代はこのような教えを学ぶことに抵抗がないと主張する。
キンボール氏は、現代文化が「憎悪、不寛容、無知の宗教」としてキリスト教を描いていると言う。そして教会は、旧約聖書の妥当性や、聖書の中にみられる性的なトッピックについて、また科学と創世記の記述の間にある問題、地獄についての教義やその他のあらゆるトピックについて、若い世代がこれらの問題に直面した時の対応方法について十分に教えることができていないと指摘する。
「私たちは、難しい質問に応答する方法を訓練する必要があります。このような文化的状況では、昔より信仰の上で信頼と好奇心を構築するために時間がかかるかもしれません。しかし、筋の通った答えが得られるなら、そのことを通して必ず信頼できるようになります」
キンボール氏は、ヤングアダルトを教え導いていくために、神学と弁証学について自由に発言できるようなクラスを設け、レッスンを行うことを教会の指導者たちに勧めている。
ヴィンテージ・フェイス教会では、このようなクラスを通し、ノンクリスチャンの出席者の増加が見られるようになったという。しかしながら、キンボール氏は、こうしたクラスは世代に関係なく、誰もが参加できるようにすべきだと強調している。 彼はまた、教会はあらゆる種類の難しい問題に対し、自由に質問できるような環境設定をする必要性があると語った。
「場合によっては論議になるおそれのある内容の質問を、勇気をもって教会の牧師に持ち掛けたが、教会リーダーたちがそのような質問を抱くこと自体間違っていると思っているため、質問をしてきた人に対し、何か間違ったことをしているというように扱ってしまう、という悲しい現実があることを多く耳にしました」
教会の指導者たちは、人々がどんな種類の手強い質問をすることも奨励すべきであるが、キンボール氏はまた、指導者たちはそれに対応できる強靭な答えを提供すべきである、と勧める。
「彼らから出た難しい問題を証明するために、2、3の聖句を提示しただけでは十分ではないこともあるでしょう。もしそこに明確な答えがあるならば、困難な教えだからという理由でアドバイスをすることをためらうべきではないのです」とキンボール氏は言う。
彼はまた、「われわれの最も重要な弁証学は、『愛』です。私たちは、この世代が直面する、最も困難な質問への合理的な答えを提供する準備ができている必要があります。しかし、それは直接的な人間としての関わり合いの中と、教会での学びのどちらをも通して、なされるべきなのです」と付け加えた。