【ニューヨーク=ENI・CJC】(クリス・ハーリンガー記)ルーテル派では米国最大の福音ルーテル教会(ELCA)は、長年にわたって、分裂を招き兼ねない同性愛関係について正面から取り組むことを避けて来た。聖公会(英国国教会)、米長老教会(PCUSA)、合同メソジスト教会など各派の抗争を意識してのことでもあった。
しかし8月6〜11日にシカゴで開催した2007年総会で2つの非常に異なる決定がなされたことで、激論の波が沸き起こるのは必至となった。
総会は10日、非独身同性愛者の聖職叙階禁止規定を維持すると決定した。ただ翌日に総会は、同性愛者をその関係を理由に制裁することを抑制するよう監督に要請した。この決定はジョージア州アトランタでの事例を下敷きにしている。
今年初めある牧師が男性のパートナーと関係を持っていることを監督に通知した際に制裁を受けた。
今回の二つの決定で、ELCAでは同性愛であることを公然化した80人以上の聖職者、神学生だけでなく、教派自体が09年の次期総会まで、人間の性の問題に向き合わされることとなった。次期総会で、この問題について同派としての声明が出されると見られる。
同性愛聖職者規制変更の提案者は、今回の決定を「大勝利」と歓迎するものの、あくまで暫定措置としている。「完全な受容と承認には至らなかったが、差別のダムは崩壊した」と、同性愛者の権利擁護団体『懸念するルーテル派/北米』のエミリー・イーストウッド氏は語る。「この決定で、代議員は政策変更の願望を示したが、2年待たされることで、さらに多くの教会が関心を持つことになろう」と言う。
教会で同性愛者の権利を拡充することに反対するグループ『ルサランCORE』は、今回の二つの決定を「とにかく同性間の関係を持つ聖職者の活動を表向き阻止はした」ものの、「裏口に回れ」と言ったようなものだ、と指摘している。
『ワードアローン・ネットワーク』のジェイナン・クラーク・エグランド代表は声明で、「私は、キリスト者として牧師として親として、宣教方策と決めるのに聖書的基準を持たない教会と、押し付ける意図のない基準を持つ教会のどちらが本当により悪いのか分からない。家庭で規律を控えるのは、子育てとしては悪いが、私たちはキリストの教会でそうしようとしている」と述べた。
総会で任期6年の総裁監督に再選されたマーク・S・ハンソン氏は「教会の基準を変えるのは言葉ではない。教会指導者たちに助言する時には、今総会の意向を反映する」と語った。