【CJC=東京】国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会は5月31日、旧日本軍の従軍慰安婦問題について「政府や公人による事実の否定、被害者を傷つけようとする試みに反対する」ことを日本政府に求める勧告をまとめた。
同委員会による2回目の対日審査が6年ぶりに5月21、22日行われ、委員会は「大阪市長の発言」に繰り返し言及しながら、慰安婦問題についての日本政府に見解をただしていた。
日本政府は、慰安婦問題を太平洋戦争での出来事として、1987年に発効した拷問禁止条約の対象にならない、と主張したが、委員会は日本政府に対し「慰安婦問題の法的責任を認め、(法律違反者を)適切に処罰する」よう勧告した。
勧告は、元慰安婦への補償や「過ちを繰り返さないために、教科書への記述などで周知するように」とも言及している。
また、代用監獄制度の廃止検討や死刑囚の家族に対する執行の事前通知なども要求した。
NHK(電子版)によると、委員会のクラウディオ・グロスマン委員長は、記者会見で「われわれはこの問題に懸念を持っており、注目を集めるべき問題だと考えている」と述べた。これに対し外務省関係者は「いわゆる従軍慰安婦の問題を巡る戦後処理については、サンフランシスコ平和条約の締結などによって、法的には決着がついているが、アジア女性基金をつくって償い金を拠出するなどの対応をとっている。勧告には、委員会に伝えた日本側の主張が全く反映されておらず、今後、内容を精査したい」としている。
拷問禁止委員会は、警察や国家権力による拷問や非人道的な扱いを禁止する拷問禁止条約に基づき、条約を守っているかどうかを調べるため、1988年に設置された。10人の委員が数年に1回のペースで各国を審査する。日本は99年に条約を締結。前回の対日審査は2007年。