【CJC=東京】教皇フランシスコが5月22日朝のミサで、無神論者の罪の救済に言及した。世界中から大きな反響があり、バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所は翌23日、「罪の救済」の解釈について補足する談話を発表した。
教皇は22日午前、居宅で行ったミサで、善いことをするなら、無神論者でも善い人とされる、として、あらゆる宗教の人、そして宗教のない人が共に働くことを促した。「主はキリストの血によって、我々すべての罪を救った。カトリック信者のみならず、すべての人を、無神論者も」と語った。
教皇は、無神論者もイエスによって救われるか、と司祭に尋ねたあるカトリック信徒の話をした際に、「あの人たちも、誰でも救われる。私たちは皆、善いことをする義務がある」と語った、とバチカン放送は伝えている。教皇は用意したメモを読み上げたのではない、という。
無神論者や無宗教者に対する教皇フランシスコの姿勢は、前任者ベネディクト16世が示したものとは対照的なところから、たちまち大きな反響を呼んだ。ベネディクト16世は、カトリック以外の信徒を「二流の信徒」と見なしているようだ、と苦情が寄せられることもあった。
米CNNテレビは、信仰にとらわれない倫理観を説いている米団体のロイ・スペクハルト氏が、「世界の宗教的、哲学的多様性に関する教皇の見解は広がっている」、「人文主義者は以前から、人は神がいなくても善良になれると訴えてきたが、その言葉をカトリック教会の指導者から聞いて大きく心を打たれた」と歓迎している、と報じた。同氏は、ほかの宗教指導者たちもこうした見解を示せば、無神論者などに対する差別の解消につながるだろうと期待を示した。
CNNによると、ネット上でも教皇の発言は注目され、無神論者や不可知論者でも天国に行けるのかと問いかける声が相次いだ。
これらの反響にバチカン(ローマ教皇庁)報道事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は23日、「すべての男女は、いかなる状況にあっても救われることができる。たとえキリスト教徒でなくても、この精神の救済行為に応えることはできる。生まれながらに罪深い存在であるというだけで、救済の対象にならない人物は誰もいない」と指摘、22日の教皇の発言については、「救済の本質についての神学的論争をあおる意図ではない」と述べた。