英ヒースロー空港ブリティッシュ・エアウェイズのチェックインカウンターで勤務していたナイダ・エウェイダさん(60)は、2006年に十字架のネックレスを外して勤務するように命じられたのを拒否したことで、ブリティッシュ・エアウェイズから強制的に解雇されていた。
ブリティッシュ・エアウェイズは、職務中に十字架のネックレスを着用することは同社の服装規定に反するとして、エウェイダさんを解雇していた。同件は英国最高裁判所まで持ち越され、その後欧州人権裁判所で判決されるに至った。
エウェイダさんの弁護士らは、同社の職務規定は欧州人権条約第9条および14条に違反すると主張した。同箇所では信教による差別を禁止する一方、「思想、良心、信教の自由」に関する普遍的権利を規定している。
欧州人権裁判所はエウェイダさんが職務中に十字架のネックレスを着用する権利を有しており、、ブリティッシュ・エアウェイズの職務規定は「同社がある種の企業イメージを確立しようとするための行き過ぎた行為である」とし、「エウェイダさんが十字架のネックレスを着用することは目立たない行為であり、彼女の職務中の見かけを著しく変化させるようなものではない。その他の宗教的シンボルを有したネックレスを個々の職員が着用することに対しても、ブリティッシュ・エアウェイズの企業イメージにいかなるマイナス要因を与える証拠とはならない」と判決を下した。
エウェイダさんの欧州人権裁判所における勝訴判決は、信教の自由の戦いにおいて歴史的な一件となった。人権保護団体リバティディレクターのシャミ・チャクラバルティ氏は「本日の判決は信教の自由と良心について、平等な取り扱いをするためのすばらしい判例となりました。エウェイダさんは、シーク教徒が頭にターバンを巻いたり、イスラム教徒の女性がスカーフで頭を覆うのと同様に信仰を表現する権利を有しているということが認められたのです。英国裁判所では彼女の信仰表現について適正な判決を下すことができませんでしたが、欧州人権裁判所では私たちの伝統にある寛容の精神に基づいた判決を下すことができました」と述べた。