北海道砂川市が市有地を神社に無償で使用させているのは政教分離を定めた憲法20条に反するとして、市民2人が菊池勝利市長の行為に対する違法確認を求めていた住民訴訟の控訴審で先月26日、政教分離違反を認めた一審判決が支持され、市長側の違憲を認める控訴判決が下された。これを受けて、日本キリスト教協議会(NCC)靖国問題委員会は3日、菊谷市長に対して上告しないように求める声明(2日付)を同協議会の公式サイトで発表した。
判決理由で伊藤裁判長は「市有地内の施設は明らかに宗教施設。ほこらや鳥居などの撤去を求めない市長の行為は、政教分離原則に違反する」と指摘している。靖国問題委員会は声明で、政教分離違反と判決が出た愛媛玉串料裁判最高裁判決(1997年4月2日)の事例を挙げ、「砂川市は上告をせず、空知太神社にかかわる宗教施設の撤去要請を速やかに行うことを求めます」と述べている。
判決によると、問題となっている神社は、砂川市空知太にある「空知太神社」。地元町内会が1970年に師の助成金を受け、町内会館を併設する形で市有地に建設していた。2カ所ある入り口の内一方に「神社」と表記され、宗教法人格はないが神事を行う。内部には、天照大神を祭ったほこらがあり、屋外には鳥居が設置されている。
訴えていたのは砂川市の谷内栄さん(76)と高橋政義さん(84)。谷内さんはクリスチャンで、日本バプテスト連盟に加盟する教会が中心となって2月11日に行った「2.11信教の自由を守る日」の旭川での集会で、スピーカーの1人として裁判の争点を自身の信仰の課題として語っている。参加者からは、「谷内さんの話は迫力があり、真の平和を望む姿勢に襟を正された」との声も聞こえた。
札幌地裁で行われた第一審では笠井裁判長が、「市が土地を無償で提供する行為は、特定の宗教に特別の便宜を与え、援助、助長することが明らかだ」とし、「市が鳥居などを撤去させれば違憲状態が解消されるのに、それを町内会に求めないのは、市が市有財産の管理を怠っていると言うべきだ」と指摘している。
今回の判決について菊谷市長は、「土地の取得は世俗的な行政行為」とした市側の主張が受け入れらなかったことに対して「残念」とし、「今後の対応は判決文を精査し、弁護士とも協議した上で検討したい」と話している。