ミャンマー軍事政権下で軟禁されていたノーベル平和賞受賞者で同国最大野党党首のアウンサンスーチー氏(66)は16日午後、ノルウェー首都オスロの市庁舎で、21年ぶりにノーベル平和賞の受賞演説を行った。17日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
スーチー氏の今回の欧州訪問は、ミャンマーの情勢について世界に広く認識してほしいという変化が同国で生じている兆候として受け取られた。スーチー氏は演説中で、「ミャンマーの最近の情勢変化のため、今日皆様とここに存在することができています。ミャンマーの情勢を世界中に伝える働きをされ、自由と正義を愛する皆様方のおかげでこのような変化がミャンマーに生じるようになりました」と感謝の意を表した。スーチー氏の欧州訪問は過去24年間で初の実現となった。
演説の中でスーチー氏は世界人権宣言序文を引用し、これまでミャンマー国内における人権の尊重のための戦いを繰り広げてきた理由について、「人権を軽視し、侮蔑する行為は人類の良心、言論の自由、信仰の自由を蝕む野蛮な行為を誘発しました。人類が圧制や君主政治に対抗する暴動に寄らず対抗するには、人権が法によって守られていなければなりません。ミャンマーの民主政治のために奮闘してきた理由を問われれば、人権を保証するために民主的な機関や行動が必要不可欠だと信じてきたからです」と述べた。
スーチー氏はミャンマー与党の連邦連帯開発党(USDP)が数十年の軍事政権を経て、2010年の総選挙導入後についに改革が行われたこと、USDPの改革によって欧米諸国によるミャンマーに対する制裁措置が緩和や、東アジア諸国連合(ASEAN)の2014年議長国就任が促されたことを伝えた。
またノーベル平和賞受賞が自身のこれまでの活動の励みになっていたことを証しし、「ノーベル委員会が私に栄誉を与えようと選ばれた時、私の自由意思によって選んだ道がただの孤独な道ではなくなりました。私の世界共通の平和を追求する活動を力づけ、支えて下さったノーベル委員会、ノルウェー国民、そして世界中の方々に感謝します。ノーベル平和賞を受賞することで、改めてさらに広範囲な人間社会の活動を行う活動に引き戻されることになりました」と述べた。
スーチー氏はまた、ミャンマー国内で生じている変化に対してあまりに楽観的になることもできないことも指摘し、「ミャンマーではポジティブな方向への数々の変化が生じてはいます。民主政治に向かって一歩一歩前に進んでいます。しかしあまりに楽観的にならないように注意を促す理由は、『盲目の信仰』を促したいわけではないからです」と述べた。
ミャンマーの民主主義活動家らは、同国で生じている改革は後退することがないと主張している。また人権活動団体は、仏教国であるミャンマーでは、インド、タイおよび中国との境界線に住む宗教少数派の状況は何ら大きな変化が生じていないことを報告している。同地域にミャンマーの大多数のキリスト教徒も在住しており、過去数十年間にわたってミャンマー政府に対し自治権を要求している。同境界線における軍事闘争では数千人の民間人犠牲者が生じてきた。
スーチー氏は未だミャンマー刑務所内で拘束されている良心あるすべての政治的抑留者について「一刻も早い無条件釈放がなされること」を願っていると伝えた。また世界各国が平和を消極的な方法で模索する姿勢についても注意を促し、「苦しみと闘争の炎が世界中に生じています。ミャンマー最北部における対立関係はまだ収まっていません。西部においても放火や暴動、殺人が生じています」と述べた。
スーチー氏の演説で司会役を務めたノルウェーノーベル委員会会長トルビョーン・ヤーグランド氏(元ノルウェー首相)は、「彼女の人生そのものが私たち全てに対するメッセージです。高い代償を支払いましたが、その分希望が必要な世界の人々へ、希望が広まっていくことにつながりました」とこれまでのスーチー氏の活動を称賛した。