日本エキュメニカル協会(理事長:徳善義和)が毎年6月、11月に開催している公開研究会が18日、財団法人・真生会館カトリック学生センター(東京新宿区信濃町)で行われた。「日本におけるキリスト教葬儀―エキュメニカルな視点から各教派における基本と実践を分かち合う」をテーマに、ローマ・カトリック教会、聖公会、ルーテル教会、日本基督教団からそれぞれパネリストが参加。各教派における葬儀の形式や意味付け、重視している点などを説明し、相互理解を深めた。
同協会はこれまで年2回の研究会で、「聖公会とローマ・カトリック教会」、「ルーテル教会と聖公会」など2教派間で行った神学的対話の成果と、世界で起こるエキュメニカル運動の問題点を主な研究内容としてきた。今年は、数年間同じテーマで研究会を開催してきたため、これまでとは方向性を変えた研究会を行おうと、各教派共通のキリスト教信仰に関わる生活様式について話し合うことになった。
パネリストとして招かれたのは、高柳俊一氏(ローマ・カトリック教会:イエズス会司祭、上智大学名誉教授)、笹森田鶴氏(聖公会:日本聖公会東京教区司祭、神愛教会牧師)、大柴譲治氏(ルーテル教会:日本福音ルーテルむさしの教会牧師)、吉岡光人氏(日本基督教団:同教団吉祥寺教会牧師)の4人。それぞれの立場から、各教派における葬儀の形式、祈祷書、式文、葬儀に対する意味づけを説明した。
質疑応答では、なかでも葬儀における祈りや説教に対する重点の置き方など、教派間で違いが出た点について多くの意見交換がなされた。一方、葬儀でのメッセージについて、「罪」や「審判」をどのように取り入れていくべきか課題が残るという声もあったが、キリストによる慰め、復活、永遠のいのちを強調すべきではないかという意見が多く、同じキリスト者としての共通性を見ることができた。
また、仕事として葬儀に携わっている参加者が発言し、葬儀の「盛大さ」によって死後が決定されるのではないこと、商業的な背景を持つ伝統を排除して葬儀を行うことなど、キリスト教信仰に則って葬儀を行うために注意している点を語った。
4人のパネリスト中ただ一人の女性であった笹森氏に対しては、葬儀中、性差によって生じる問題について質問があった。笹森氏は、葬儀の際に使用する「兄弟」「姉妹」という呼び方に対して、本人の意志と家族の要望の間で相違がある場合も存在することを挙げ、葬儀においても性差による課題が多いことを示した。
次回の公開研究会は11月12日、日本イエズス会管区本部である岐部ホール(東京都千代田区麹町)で開催される。テーマは、「信教の自由と政教分離エキュメニカルな視点から」。パネリストにカトリックの立場として谷大二氏(さいたま教区司祭)、プロテスタントの立場として森本あんり氏(国際基督教大学教授)を予定しており、現在交渉中。参加費は無料(賛助献金あり)。問い合せは、日本エキュメニカル協会事務局(日本基督教団吉祥寺教会内、電話:0422・22・4978、FAX:0422・21・0683)まで。