ラスムッセン報告書によると、ほとんどの米国人は教会活動と国家の役割を分離されたものと見なすことは問題と考えておらず、9.11テロ事件跡地に鋼鉄の十字架を建てることも問題ではないと見なしていることが明らかになった。
同調査では「鋼鉄の十字架」を建てたことについて宗教的であると反論する無神論者のグループについてどう思うか7月29日から30日にかけて1000人の成人米国人に調査を行った。
その結果、調査に参加した米国人のうちの68パーセントが米憲法が教会と国家が分離されたものと見なしていることに賛成しており、貿易センター跡地の十字架の建設については72パーセントが憲法上問題ないと見なしていることが明らかになった。一方十字架を建てたことが憲法上問題であると答えた人の割合は10パーセント、「分からない」と答えた人の割合は17パーセントとなった。
9.11テロ事件から10周年を迎えようとする米国において、先週米無神論者らが貿易センター跡地および隣接する博物館から十字架を取り除くように要求する訴訟を起こしていた。訴訟を起こした無神論者のグループは、「他宗教の象徴となるものも十字架と一緒に建てることができないのならば、十字架は取り除かれるべきだ」と訴えている。
全米法律正義センター(ACLJ)は世界貿易センター跡地に建てられた「鋼鉄の十字架」が米国法に違反した宗教的なものであるという米無神論者らの訴えについて、法廷助言者を立てると発表していた。
無神論者のグループは貿易センター跡地、博物館での十字架の設置は「政府が所有する土地において不法に特定の宗教を宣伝している」と訴えている。訴訟では十字架が設置された博物館、ニューヨーク州、ニュージャージー州およびニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグ氏を被告として挙げている。
ブルームバーグ市長は同訴訟について、最近のラジオ放送で「米無神論者らは訴訟を起こす合法的な権利があります。一方で十字架に希望と強さを見出すことのできる人たちにとっては十字架というキリスト教のシンボルを大切にし、またそれが大切であると表現する自由があるでしょう。十字架の展示は人々に影響を与えます。十字架によってそれを見る人々に強さを与えてきました。博物館に来る人たちは、それが正しいと思うかどうかは別として、9.11テロ事件後の人々に影響を与えたバックグラウンドとなっているものは何か知りたいと思われるでしょう。それが歴史というものです。博物館は歴史のために存在しており、人々に展示によってその歴史を教える役割があります。一方でその展示物を見た結果、博物館を訪れた人が何を感じどういう行動をするかは自由です」と述べている。一方でブルームバーグ氏は、ダビデの星や聖書など、他の宗教的象徴を9.11テロ事件跡地および博物館で展示することも考慮に入れているという。
米共和党議員で米議会祈祷部会議長を務めるランディ・フォーブス氏は先週の無神論者らによって行われた訴訟について「(十字架の意味を)誤解しており、遺憾に感じます。十字架を取り除こうとする試みは、公共空間からすべての宗教的シンボルを取り除こうとする絶え間ない試みの一環にすぎません。多くの人々の命を奪った歴史に残る悲しみの日の象徴として建てられた十字架を取り除くことは、その十字架によって慰めを受けてきた多くの被害者・遺族の方々に屈辱を与える行為です」と述べている。
2001年9月11日に生じたテロ事件後に建てられた「鋼鉄の十字架」は貿易センタービル崩壊後の残骸から偶然見つかった十字架の形になった鋼鉄の角材をシンボルとして跡地に建てたものである。元々はニューヨークでもっとも伝統あるカトリック教会である聖ペテロ教会に建てられていた。