ローマ・カトリック・アングリカン国際委員会(ARCIC)が16日、世界のローマ・カトリック教会と世界聖公会(アングリカン・コミュニオン)の教義上のマリアの地位に関する共通理解をまとめた共同声明を米シアトルの聖ヤコブ・カトリック教会で発表した。声明は英・ロンドンのウェストミンスター寺院(英国国教会=聖公会)で現地時間19日正午をもって正式に効力を持つ。英クリスチャントゥデイ紙が17日報じた。
「シアトル声明」とも呼ばれる同声明は「マリア:キリストにある恩寵と希望」と題され、43ページからなる。ローマ・カトリックと聖公会の国際超教派担当の代表が発表に向けて5年間協議してきた。協議は聖公会評議会とバチカン教皇庁キリスト教一致推進評議会が共催した。
声明は昨年2月の会議で完成したが、バチカン、聖公会カンタベリー大主教のいずれかが合意に難色を示していたとされている。委員会は、発表された声明は教義の変更を伴わないものとの位置づけで、各教会で学習と評価を進めてほしいとしている。
ARCIC委員のグレゴリー・キャメロン氏(聖公会)は「声明はキリスト教信仰に基づいた正統な証しと認識している。マリアが特別な存在であることの理由をキリスト教徒が知るための助けとなれば」と話している。
ARCICは1968年、ローマ・カトリック教会と聖公会が、両教会を分断してきた教義について共同理解を探る目的で設立された。処女マリア以前には、聖餐、宣教、救いと義認、教会論、倫理、教職の階級と権威について協議してきた。
聖公会とカトリック教会は、マリアが母の胎内に宿った瞬間から原罪を免れていたという教義、マリアが霊魂と肉体とともに昇天したという教義で意見が異なる。聖公会を含むプロテスタント教会は、カトリックが主張するマリアの無原罪懐胎論、マリアの被昇天論を「聖書的根拠に欠けた教義」としている。
ARCIC委員でオーストラリア聖公会大主教のピーター・カーンレー氏は英BBCニュースの取材に対し「今後も協議を続けることで、両教会の間に根強く残っていた不一致が緩和されると思う。聖公会は、カトリックのマリア論を『聖書的根拠がない』と反論することを止める方針を固めた」と明らかにした。同氏は「マリア論はもはや教会を分断する原因となり得ない。声明には両教会の間にある深い溝を埋める目的がある」と述べた。
声明に関する説明(英文)は聖公会(アングリカン・コミュニオン)のウェブサイト上に公開されている。
リンク:An Introduction to Mary: Hope and Grace in Christ