「信教の自由は世界中どこの人にも保障される他人に譲渡することのできない基本的人権の一つである。しかし信仰をもっている人々は現在信じている宗教から別の宗教へと信仰を変更するときうしろめたさや、周りからの圧力を受けるのが現実である」−バチカンと世界教会協議会(WCC)が共同でこのような改宗に関する声明文を発表した。
キリスト教プロテスタント、カトリック、仏教、ヒンズー教そしてイスラム教それぞれの信仰をもつおよそ30名の宗教指導者らがこの声明文発表のための会議に出席した。
イタリアラリアーノで5月12日から16日にかけて開催された今回の会議において、「世界中すべての人類は他宗教に改宗する際に何の外的圧力もなく改宗できるべきである」という声明文が出された。
現在改宗が原因で生じる紛争で数百人もの宣教師を死に追いやっており、パキスタンやイランのようなイスラム法で統治されている国家においては、改宗は法律で禁ぜられており、改宗した場合には極めて厳しい刑が課されている。
今月始めには、インドネシアポソにおいて、3人のクリスチャン女子学生を殺害した容疑で5人のテロリストと思われる容疑者らが逮捕された。国際キリスト連帯(CSW)によると、 この殺害された3人のクリスチャン女子学生らの頭部がビニール袋に入れられて教会と交番の近くで発見され、その少女らの頭部には「さらに100人近くのクリスチャン学生が今後殺害されるだろう」と書かれていたという。
国連による世界人権宣言では改宗は基本的人権のひとつであると定義されており、「何人も思想、良心、信教の自由が保障される権利を有する。この権利には改宗の自由も含まれる」と明示されている。
WCCとバチカンによる共同声明はこの改宗に関する普遍的な権利を確信させるものであり「信教の自由は世界人類すべてが有する不可侵かつ譲ることのできないすべての人権の基盤となるものである。信教の自由とは何の弊害もなく自由に個々人の信ずる宗教を信仰し、また他者へ宣教すること、そして他者が異なる宗教へ改宗する自由があることを意味する」と声明文ではっきりと明言された。
また声明文では「改宗」と「強制的改宗」をはっきりと区別し、「他者をある人の有する信仰に対して理解するように導く権利には他者の人権や宗教的尊厳を害する行為は含まれるべきではない。他者の信仰を自分自身の信仰よりも尊重する責任があり、自分の信仰の優越性を示す目的で他者の信ずる信仰を侮辱したり、誤った解釈を説明することは決して許されるべきではない」と今回の声明文に明示された。
また今までの歴史の中ですべての宗教の支持者らによって宗教上の過失が見られたというそれぞれの信仰する宗教の歴史的背景や教義を誠実に自己批判的に振り返る必要があり、「自己批判や悔い改め」を行い、各信仰共同体はそれぞれの信者が改宗を行うに当たって健全な対応ができるように修正するべきであることも声明文で明示された。改宗における健全な対応とは、たとえば子供や障害者などの弱みに付け込んで「非倫理的な方法」で改宗を妨げるようなことを行わないようにすることなどが含まれるという。