北朝鮮が2000年以降も政府非公認の教会、いわゆる地下教会を摘発し、関係者を処刑するなど宗教弾圧を続けていることが、韓国・統一研究院がこのごろ発表した「北朝鮮人権白書2005」で分かった。
白書によると、2001年、平壌(ピョンヤン)の南西、南浦市で宗教を伝播し摘発された5人が銃殺された。また窃盗や日本製中古車密輸、祖国反逆などを理由に公開処刑が行われたという。
同研究院が韓国にたどり着いた脱北者と個別面接して調査した結果、北朝鮮政府がキリスト教の伝播を防ぐために努力していることが判明。1997年から住民たちに「キリスト教徒識別要領」「キリスト教伝播者索出の必要性」などを教育し、告発者を養成しているという。
脱北者のユ・モウ氏は「私は1996年から3年間、信徒を尾行して地下教会を摘発したことがある」と話した。平壌北西、雲山市では、一家族が礼拝を行っている途中、礼拝が発覚し、4人が処刑され、残りは政治犯収容所に監禁されたと伝えた。
90年代初期には、韓国との国境付近の町で86人の地下キリスト教徒らが国家安全保衛部に摘発され、一部は処刑されて残りは収容所に送られた。
北朝鮮は宗教の自由があることを強調するために平壌などに宣伝用教会などを建てたが、統制が難しい住民たちの地下・秘密教会は厳重な監視の対象になる。
一方、北朝鮮に変化が起きているとの見方もある。研究員によると、北朝鮮が国連など国際社会の圧力で、04年4月「国家は刑法で犯罪と規定した行為に対してのみ刑事責任を取る」(憲法6条)の罪刑法定主義を事実上受け入れた。また金正日総書記が「社会主義国に銃声が多く鳴りすぎる」と発言してから公開処刑が減り始め、03年3月にはこれを控えるという当局の発表があった。
だが、今年3月に北朝鮮北部、咸境北道の会寧市で行われた公開処刑の動画がインターネット上に出回り、同国の人権状況は依然として最悪との認識が国際的に広まっている。