10日間の日程で開催中の全聖公会中央協議会(英・ノッティンガム市、以下、ACC)は22日(現地時間)、同性愛に寛容的な米国とカナダ両聖公会に対し聖公会全組織からの脱退を求める保守派の要請を、得票比30対28の僅差で退けた。聖公会の世界組織「アングリカン・コミュニオン」が23日(同)公式サイト上で発表した。投票結果は、世界の聖公会内に、米・カナダを支持する勢力が拡大していることを浮き彫りにした。当初、コミュニオンからの脱退は米国とカナダのみとされていたが、同性愛問題をめぐって、08年のランベス会議までにコミュニオン全体が大きく分裂する可能性が出てきた。
ACC初日、米国聖公会は、同性愛者の聖職就任の経緯を発表し、同日提出した130ページの報告書の中で、同性愛者の聖職就任を容認する姿勢を継続するとの立場を表明した。
これに続き、カナダ聖公会の代表が同日午後、同性カップルの祝福に関する見解を発表した。ただ、対話と理解を求める文言を多く含み、融和姿勢を示した。
コミュニオンの発表によると、ナイジェリア聖公会(信徒数1750万)のピーター・アキノラ大主教ら保守派は、米国とカナダに対し、コミュニオン内の全組織から3年間、身を引くよう要請した。
この要請をめぐって議場から「全組織からの排除ではなく、常置委員会と中央財務運営委員会からの排除にとどめてはどうか」との修正案が提案された。要請は議場で審議され、2票差で修正案が採用された。
コミュニオンの教会憲法では、同性同士の性行為は聖書の教えに反し、同性愛者の聖職就任と同性カップルの祝福を禁じている。
修正案が採られたことで、ACCが「同性愛者の証言に耳を傾け、同性愛を積極的に学ぶことができる」との融和的な姿勢を示した格好となった。
だが、この「融和策」はコミュニオン内の保守派対リベラル派の関係改善をもたらさないとの見方が強い。リベラル派は米国聖公会で主流となっており、一方、保守派はアフリカとアジアで主流だ。
カンタベリー大主教ロワン・ウイリアムズはACC初日、米国とカナダの聖公会による同性愛容認の動きは多くの聖公会の怒りと悲しみを招いた、と話していた。米アングリカン協議会議長、デビッド・アンダーソン参事司祭は、米各紙に対し、「分裂はもはや避けられない。北米の脱退となるか、全聖公会を巻き込む分裂となるかは、現時点で分からない」と語った。