イスラム教組織のムスリム・ブラザーフッドがエジプト政府内で大きな役割を担おうとする動きを見せるにつれ、米政策指導者らは注意深くエジプトの動きを注視するようになってきている。11日のムバラク大統領辞任を受け、民主主義政治を期待する民衆からは歓声が沸いたが、今後の混沌とするエジプトで生活する1000万人のキリスト教徒の立場がどのように変わるかは不透明である。
ムスリムブラザーフッドは世界で最も影響力のあるイスラム教団体の一つと言われている。1928年の設立以来、ムスリム・ブラザーフッドは宗教、政治活動および社会福祉を混ぜ合わせた活動を行ってきた。同団体ではイスラム教こそ人生の問題解決の方法であるとし、イスラム教による国家を設立させることをスローガンとして活動してきた。
エジプトでは混沌した治安の悪化した状態が続いている。15日には、米CBSテレビの女性記者がエジプトの動乱の様子を取材中に現地の暴徒に襲われたと報じられた。また16日にはエジプトのファリド保険相が先月25日以降の反政府デモを受けた死者数が365人、負傷者5,500人となったと伝えている。
キリスト教迫害監視団体オープンドアーズと提携関係にあるエジプトの教会の牧師は「エジプトのキリスト教徒たちは今後を懸念しています。特に今は最も危機的な状況であると思います。しかし私たちは神に信頼します。エジプトが新たに民主主義国家として生まれ変わり、キリスト教徒に自由を与える国家となるように祈り、期待しています」と述べている。2011年度キリスト教迫害国ワースト50の中でエジプトは第19位にランクインしており、オープンドアーズでは、エジプトへの祈りを世界諸教会に呼びかけている。
イスラム法では、イスラム教を棄教した人に対する死刑執行が可能となっており、イスラム法がそのまま国家の法律へと適用されるようになれば、キリスト教とへの深刻な迫害が懸念される。ピューリサーチスタディの調査結果によると、エジプトでは国民の84%がイスラム教背教者への死刑執行に賛成しており、76%が姦淫の罪を犯した者への石打ちによる死刑に賛成しているという。
15日にはムスリム・ブラザーフッドはエジプトで民主主義政治が確立すれば、政党を設立する意向があることを発表している。ムバラク大統領辞任を受け権限を委譲されたエジプト軍最高首脳会議では、専門家によるパネルを立ち上げ、同国憲法を改正し、今年末にも民主主義による選挙を行う準備をしている。今後10日以内に修正された憲法の草案を発表し、民主主義選挙への道を提示することになっている。