【CJC=東京】2010年12月24日、世界各地で激動の中にも関わらず、クリスマスの式典、祝祭が行われた。
中国のカトリック者は、教会の現状にもかかわらず、喜びと平和でクリスマスを祝った。大雪に見舞われた中国北東部では、非公認の司祭が教会や「祈りの場」を巡回し、深夜ミサを守った。
フィリピン南部のイスラム教優勢地域で、警察基地内にあるカトリック教会で25日朝、100人がミサに参列している最中に爆破事件があり、屋根が吹き飛ばされ、司祭ら6人が負傷した。
インドネシア・ジャバ島西部では、当局の中止要請を振り切ってカトリック、プロテスタント双方がクリスマスを祝った。
イラクでは、国際テロ組織アルカイダ系の『イラク・イスラム国』(ISI)が21日、キリスト教徒攻撃を続けるという声明を発表したのを受け、24日のミサは中止され、25日のミサも時間を朝に変更した。カルデア典礼カトリック教会のルイ・サルコ大主教がキルクークから、恐怖はあるが、イラクのキリスト者は平静を保たなければならない、と語った。
サウジアラビアではイスラム教以外の宗教行為は禁止されているため、キリスト者はクリスマスを祝うのに極力目立たないように配慮した。首都リアドにはクリスマス・シーズンを示すものは何もなかった。
キリスト生誕の地、ヨルダン川西岸ベツレヘムは、季節外れの暖かさ。イスラエル・パレスチナ間の紛争も一時的にではあれ治まっていることもあり、24日深夜から恒例のクリスマスミサが催された聖カテリナ教会は、教会や前の広場が多くの巡礼や訪問者でにぎわいを見せた。
ただイスラエルが設置したコンクリート製の分離壁で、ベツレヘムは聖地エルサレムと分断され、観光客は同国軍の検問を受けている。それでもイスラエル当局は、クリスマス・シーズンにベツレヘムへの訪問客は前年の7万人を2万人上回ると見ている。
パレスチナ自治政府によると、今年、ベツレヘムを訪れた巡礼者や観光客は西岸での治安改善を受けて、計145万人に達し、過去最高を記録した。
ラテン典礼カトリック教会のフアド・トゥアル・エルサレム総大司教もエルサレムからやって来て、「我々の教会の鐘の音が、中東に響く武器の音を消し去りますように」と述べ、中東和平の実現を呼び掛けた。
同教会に隣接する『聖誕教会』前の広場には、世界中から信者や観光客が集まり、聖夜を祝った。ただ『聖誕教会』は傷みが激しく、緊急修理が必要で、それまでは入場者を制限しなければならなくなる、と現地当局が24日、警告を発した。
ただベツレヘムの住民5万人のうち、キリスト者は3分の1。1950年代は75%だった。キリスト者人口は中東全域で減少が続いている。暴力を含む抑圧を逃れ、外国で立ち直りを図って出国する人が多い。
教皇ベネディクト16世は24日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で行った恒例の深夜ミサで、虐待のない世界の実現へ祈りをささげた。信者約1万人が参列した。
教皇は「キリストは人類に虐待行為を克服する力を与えた」と述べ、人権の重要性を世界に訴えた。さらに助けを必要としている人たちに手を差し伸べる「友愛精神」を持つよう語り掛けた。
教皇は、ソマリア、スーダン ダルフール、コートジボワール、アフガニスタン、パキスタンなどの地域で起きている政情不安や混乱の収拾を求めた。
教皇は、さらに中国国内のカトリック教徒が迫害を受けている問題にも触れ、信教と良心の自由について共産主義の制約に直面して勇気を持つよう促すクリスマスメッセージを発表した。教皇がメッセージの中で中国の宗教政策に懸念を示し、間接的にでも批判するのは極めて異例で、バチカンの影響力が国内に浸透するのを抑えようと中国政府が規制を強めていることに対応したものと見られる。
教皇は、北朝鮮による韓国・大延坪島への砲撃で緊迫が続く朝鮮半島情勢に触れ、「和解が進むことを希望する」と述べ、さらにイスラエルとパレスチナの平和的共存を呼び掛けた。このほか、大地震で大きな被害を受けたハイチでコレラの感染の広がりが問題となっていることを受け、感染が抑えられ、被災者に希望がもたらされるよう願うと述べた。
続いて教皇はサンピエトロ大聖堂のバルコニーから「クリスマスと新年おめでとうございます」と、日本語を含む65の言語であいさつ、「ウルビ・エト・オルビ」(ローマ市と世界へ)の祝福を行った。
ナイジェリア北東部では24日、教会2カ所が襲撃され、バプテスト派の牧師など少なくとも6人が殺害された。また中央部でも爆発があり死者20人が出ている。