今日は、前回の私のコラム『アルマゲドン』への批判に答えてから始めることにしよう。この映画のファンやブルース・ウィリスのファンに言わせると、私が、この映画を最低呼ばわりしてけちょんけちょんにこきおろしたのは、やり過ぎというご指摘だった。
私が頭にきた理由を説明すると、まず、聖書の世界最終戦争アルマゲドンに関係ないのに、聖書刊行会の許可もなくこの言葉を使用したこと。ちょっと許せない気持ち。
7万2000キロの超スピード(ジャンボ・ジェットは時速600キロ)で飛んでいる惑星の上で車に乗ったり、歩いたり、いくら宇宙服を着ても無理だと思ったこと。大気圏に入る時には惑星は火の球になってそうだし。
また、かっこいいヒーローが現れてアッと言う間に大問題を解決してしまうおきまりのパターン。第一回目のコラム『KNOWING』では、主人公はなすすべもない一人の弱い人間として死んでゆく(両親と和解し、抱き合いながら)、私はこういう終わり方に真実味を感じるのだ。
ブルース・ウィリスが試写会後にインタビューを受けた時に、次の返事をしたのを今でも覚えている。
I:ヒーローになった気分はいかがですか。
B・W:どうってことないよ。あんな映画のヒーローになることは、誰にでもできるよ。
I:それでは、どんなことが、難しいのですか。
B・W:決まってるだろう。よい父親になることだよ。(さすが、B・W!)
さて、今日のテーマはエイリアンの攻撃による人類滅亡説だ。
インデペンデンス・デイ(アメリカ独立記念日・7月4日)を2日前に控えた7月2日、直径24キロにも及ぶ円盤形のUFOがニューヨーク、ロスアンジェルス、ワシントンD.C.また世界中の大都市(東京にも)の上空に出現した。
混乱に陥る中、アメリカ政府は交流を求めるためにUFOとの交信を試みるも、容赦ない攻撃を受けてしまう。ようやく彼らが侵略者である事を理解するが、時遅く、エイリアンによる一切攻撃が開始された。人類の運命やいかに・・・。
地球外知的生命体(宇宙人orエイリアン)による攻撃によって、人類は滅亡するという説が映画の背景になっている。
現代、ほとんどの宇宙科学者と宇宙物理学者たちは地球外生命体の存在を認めている。恒星は、地球上の砂の数の10万倍ほどあるそうだが、学者たちによると、少なくとも地球と同じような環境を持つ星が200万個はあるというのだ。宇宙は137億年前に誕生し、地球は46億年前に生まれた、と彼ら(私ではなく)は言う。量子力学とハッブル宇宙望遠鏡(宇宙間を飛び回る)が集めたデータから計算したそうだ(えらーい学者先生たちの言うことを書いているだけです)。
つまり、ほとんどの学者たちは地球外知的生命体の存在を予測しているということだ。私は、そんなことは絶対ない、と思っている。私は、今でも太陽は地球の周りを回っている、と思い込んでいる数少ない人間(私一人だけかも)なのだ。
地球の年齢は比較的若い。つまり、地球より数億年前、いや数十億年前に生まれた地球に似た惑星がいくらでもある、と科学者は声をそろえて言う。それなら、異星人の知性と技術は地球人よりはるかに優れているに違いない。彼らから見るなら、地球人の知性はチンパンジー並みだろう、というのだ。恐らく彼らが地球人を見ても、知的生命と認められないらしい。人類を滅亡に追いやるというより、蟻を踏み潰す程度にしか感じないかもしれない。
光速に近いスピードで旅行できなければ、何百万光年の旅をして地球に近づくことはできないはずだから、彼らは、よほど頭がいい。それこそワームホールでも通って来て、タイム・トラベルをしてやってきたのだろう。もしかしたら、彼らの寿命は何百万歳かもしれない。
彼らの欲しいのは地球の資源らしい。金とかダイヤモンドとか・・・、ちょっと人間に似すぎていると思わないだろうか。それよりも地球に住みたいのかもしれない。彼らから見ると水の惑星・地球は極めて魅力的らしい。
つまり、これらの偉い学者たちの言うことを総合して考えると、もし直径24キロのUFOが世界の大都市上空に現れたら、人類は滅亡するしかない。このアメリカ映画のように、ハンサムなヒーローが現れて、万事よし、一件落着のようなことはできないだろう。
映画『ET』に登場するような「仲よしこよし」の宇宙人は全く考え辛い。私たち地球人の歴史は、人間同士でさえ、絶えない戦争の繰り返しだから、お土産を持ってくるエイリアンを期待すべきではないと思う。
ペテロは「その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれさり、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます」と言う。
黙示録に「馬の頭は、ししの頭のようで、口からは火と煙と硫黄がでていた」と書いてあり、「火と煙と硫黄とのために、人類の3分の1は殺された」と9章1節に書いてある。「ししの頭をした馬」はエイリアンなのだろうか。『インデペンデンス・デイ』のエイリアンはイナゴの頭をしているそうだ。
北イスラエル王国の偶像礼拝と堕落をさばくためにアッシリア軍隊を遣わし、南ユダ国をさばくためにバビロニア軍隊を遣わした主が、今日の人類をさばくためにエイリアンを遣わすことがあるのだろうか。
ハリウッド映画はともかく、学者たちの見解はさておき、聖書ははっきりと、終末は来る、と繰り返し語っている。エイリアンの攻撃はあり得ない、とは言い切れない。
平野耕一(ひらの・こういち):1944年、東京に生まれる。東京聖書学院、デューク大学院卒業。17年間アメリカの教会で牧師を務めた後、1989年帰国。現在、東京ホライズンチャペル牧師。著書『ヤベツの祈り』他多数。