あなたがたのうちに働きかけて、その願いを起こさせ、かつ実現に至らせるのは神であって、それは神のよしとされるところだからである。(ピリピ4:13)
1.ビジョンを持とう(Be ambitious!)
札幌農学校の校長クラーク博士は、“Boys! Be ambitious!"(青年よ!大志を抱け!)という言葉を残して日本を去りました。このことばは、同校の学生であった内村鑑三や新渡戸稲造たちの心を鼓舞したばかりでなく、明治、大正、昭和を通じて日本の青少年への大きな励ましのことばとなってきました。
平成に入り21世紀を迎えた今、このことばは急速にすたれつつあります。しかし今日は、“Christians! Be ambitious!"(クリスチャンよ!大志を抱け!)特に、“Japanese Christians! Be ambitious!"(日本のクリスチャンよ!大志を抱け!)と声を大にして叫びたいと思います。
それは、箴言29章18節にキング・ジェームズ訳によると、“Where there is no vision, the people perish." と書かれいるからです。日本語に訳せば、「幻のない民は滅びる」です。「ビジョンを失った人は滅びる」のです。今や多くの日本のビジネスマンが自殺してます。最近ではビジネスマンばかりなく、中高生、大学生の間にも自殺が増えているようです。そのため、日本人の(特に日本人男性の)平均寿命は大幅に縮まっています。自殺の原因は言うまでもなく、「ビジョンの喪失」にあります。人生の目標、生きる目的を見失ってしまったから自ら命を絶つのです。
この箴言29章18節を逆にすれば、“Where there is vision, the people prosper."になります。「幻のある民は栄える」ということです。「ビジョンを持つ人は多いに成功する」のです。
2. 鉱業権(石灰石の鉱脈)
皆さんは鉱業法という法律をご存じでしょうか。金、銀、銅、石油、石炭などの鉱山資源にを採掘するためには、政府からこの鉱業法に基づく鉱業権という権利の設定を事前に受けなければならないのです。
だいぶ前のことですが、沖縄が返還される前に、私はこの鉱業権の設定にかかわったことがあります。返還前の沖縄には鉱業法がありませんでしたから、誰でも自由に鉱業資源を採掘できたわけです。ところが、返還と同時に日本の鉱業法が適用されることになりました。沖縄は石灰石の産地ですが、それまで自由に採掘できたのに、返還後は鉱業権を設定しないと、それができなくなるわけです。
これは企業、特にセメント会社にとっては死活問題です。私は沖縄にある大手セメント会社に頼まれて、返還前2年以上前から石灰石の鉱業権設定の準備をしてきました。直前1カ月は沖縄の名護市のホテルに泊まり込みで、山を歩いて境界線の確認をしたり、必要申請書類や図面の作成をしたのです。
いよいよ返還当日です。万全の準備をして郵便局の始まる30分前に書類を持って行きました。同じ地区に複数の鉱業権設定申請があったときは、郵便局の先着順に優先権が与えられるからです。
ところが、郵便局前に数十人の方が並んでいます。恐る恐る聞いてみると、皆さん鉱業権設定申請のために並んでいると言うではありませんか。一番前の人たちは徹夜で並んだそうです。それを聞いて、頭から血が引いて顔面蒼白になってしまいました。もし、同じ鉱区に先に出願されたら、権利を得られないのです。何のために2年も前から準備したのか。すべての努力と費用が無駄になってしまうばかりでなく、依頼会社は原料資源を失い廃業に追い込まれるかも知れません。
当時の私は神を信じる信仰がありませんでしたから、結果がわかるまでの約1カ月は毎日生きた心地がしませんでした。幸いなことに、こちらの申請した鉱区の一部を除いて重要な大部分は他に申請がなく守られました。こうして当時の生産能力の200年分の埋蔵量の石灰石を確保できました。
3. 大きなビジョン(石油の油田)
このような大きな試練を体験したためか、いまだに鉱業権の設定ということに興味があります。実は、私はある「大きなビジョン」を持っています。アフリカ最大の産油国であるナイジェリアから石油を輸入して、その収益を福音のために用いようというビジョンです。これは、日本に9年間滞在したことのあるナイジェリアのジョン・バッサ兄弟との間のビジョンです。彼はナイジェリアの政治的混乱を正すために大統領選挙に立候補すべく準備をしています。同時に、政府の石油公団が独占して役人たちによって私物化されている石油採掘権を民営化して、石油を日本に輸出しようという構想を持っています。このビジョンの実現のためにお祈りください。
このビジョンが実現すれば、アフリカ各国のクリスチャンの政治家、実業家と提携して、あらゆる資源を日本のクリスチャンが輸入して、福音のために役立てることができる可能性が開けてきます。
石油を採掘するためには井戸を掘るように、地中に深く穴を掘っていかなくてはなりません。これをボーリングといいますが、ボーリングを続けていって石油の油田に突き当たると、油が吹き出してくるのです。そして油田の埋蔵量の分だけ石油を採取することができます。
しかし、石油のボーリングにはリスクがあります。掘っている地下に本当に大きな油田があるかどうかの確認ができにくいことです。ですから、ある程度までボーリングをして石油が出てこなければ、あきらめて別の鉱区でボーリングをすることになります。この費用は莫大なものです。
ある青年が将来の石油王を夢見て有望な鉱区でボーリングを試みました。しかしどこまで掘っても油田に突き当たりません。ついにあきらめて転職してしまいました。ところが、同じ井戸を後からきた別の人がさらにボーリングしつづけたところ、膨大な油田に到達したのです。この人は自分の会社を上場して、一躍、石油の大会社を経営することになりました。
あきらめて転職した青年はこれを知って、それからは一度志したビジョンは、それを実現するまで絶対にあきらめないで努力する決心をしました。彼は政治家を志し、ついにアメリカの大統領になりました。その名は、ハリー・トルーマンです。
4. もっと大きなビジョン(聖霊の大油田)
石油を採掘することは大きなビジョンです。しかしこれは誰でもできるわけではありません。まず、各国の鉱業法に基づく鉱業権の設定が必要となります。相当な資金と技術がなければできません。ボーリングをしても油田がなければ大失敗です。また、どんなに大きな油田でも埋蔵量には限りがあります。取り尽くしてしまえば、なくなってしまうのです。
しかし、私たちは「もっと大きなビジョン」を持つことができます。なぜなら、私たちは、無尽蔵の大油田の鉱脈があることを知ってるからです。しかも、この大油田は誰でもボーリングできるのです。そもそも、鉱業法の適用がありませんから、鉱業権を設定する必要はありません。資金も技術もいりません。男も女も、大人も子どもも、誰でも掘れます。どこでも掘ることができます。中近東やアフリカに行かなくても、この日本のどこでも、掘れるのです。掘り続ければ必ず油田に到達します。しかも埋蔵量は無尽蔵すなわち無限大ですから、どんなに採っても尽きてしまうことがありません。
言うまでもなく、聖霊の大油田です。聖書によれば、私たちの目に見えない霊の世界には聖霊の大油田があるのです。「神は私たちに限りなく聖霊をくださる」と書かれているからです。私たちが天の父に求めるものは、み心にかなう限り、どんなものでも与えられます。求めるものの中で最も大切なものはなんでしょうか。もちろん、それは聖霊です。霊なる神ご自身です。あれをください、これをくださいと求めることよりも、あらゆる恵みの与え主である聖霊ご自身を求めることが、最もみ心にかなっているのです。「あなたがたも、悪いものではあっても、自分の子どもには良いものを与えることを知っているのです。とすれば、なおのこと、天の父が、求める人たちにどうして聖霊をくださらないことがありましょう」(ルカ11:13)とあるとおりです。
5. 祈りのボーリング(オアシス祈り会)
30年近く前になりますが、東京で数人のビジネスマンが日本のリバイバルのために祈ろうと、祈り会を始めました。私もそのメンバーの一人です。この祈り会は「聖霊のオアシスになるように」と願い、「オアシス祈り会」と名付けられました。
この「オアシス祈り会」で、たくさんの祈りがささげられ、多くの願いが実現してきました。けれども、日本のリバイバルは興らず、自分たちの活動も限られたものでした。多くのメンバーが交代していきました。時には聖霊の火が消えかかり、「もうやめよう」という声が何度も上がりました。しかし、主のあわれみによって今日まで継続でき、祝日と正月休みを除いて毎週祈りが捧げられてきたことを感謝しています。
十数年前から突然、いろいろな事が起こり始めました。まず、当時、福音伝道のために帝国ホテル1カ所で朝食会がもたれていましたが、このホテル朝食会をもっと大きく展開しようというビジョンが与えられたのです。「50カ月のうちに50のホテルで」("50 hotels within 50 months") というビジョンが掲げられました。それまで長い間1カ所でしかできなかったのに、急に50カ所に拡げるというのは、常識的にはとても無理な話です。
しかし、これは主が与えてくださったビジョンにちがいないと、祈り会の皆さんが一致して動き始めました。次から次へと、新しいホテルにチャレンジして、今では東京地区だけで約20カ所、名古屋、大阪、ニューヨークを含めると約30カ所で朝食会が行われるようになったのです。
そして、さらに祈っていると、朝食会に参加できない人たちのために夕食会を、これも「50カ月のうちに50カ所で」("50 places within 50 months") スタートしようというビジョンが与えられました。これが「インターナショナルVIPクラブ」という名称で急展開しています。海外においてもアメリカ、アフリカ、タイ、インド、インドネシア、フィリピン、ドイツ、韓国の各地でも始まっています。
このVIPクラブでは年に数回、数百名単位の大きな伝道集会が行われるようになりました。この伝道朝食会と伝道夕食会それに大きな伝道集会の急速な拡大、発展は、そのために祈っている私たち自身が驚いています。30年にわたる日本のリバイバルのための祈りが、日本だけでなく全世界へと拡がり始めたのです。きっと、私たちの決してあきらめなかった「祈りのボーリング」が、「聖霊の大油田」に到達したにちがいありません。「人格を持たれる聖霊なる神としっかり結ばれた」ということです。
この「祈りのボーリング」はこれからもずっと、より深く、より大きくなるように続けられますが、この「祈りのボーリング」に参加している方々はきわめて幸いです。それは噴き出す聖霊の油を受けたいだけ受けられるからです。祈っていることが、次々と実現していく恵みを受けるからです。残念ながら「祈りのボーリング」の中途であきらめてしまった方々は、再び戻ってくるか、あるいはトルーマン大統領のように、新しいビジョンに向かって前進して欲しいと願っています。
6. バイプロダクツ(副産物)
石油の主たる用途は、火力発電や自動車の燃料です。エネルギーとして用いるのです。しかし、この石油から、ナイロン、ビニール、プラスチック、化粧品、医薬品等、数限りなく副産物が製造されています。それらは、私たちの日常生活において大変有用です。
同じように、聖霊の油としての主たる用途は、人々の心に情熱と力(デュナミス)を与え、大胆にイエス・キリストのあかしをさせることです。これが伝道朝食会、伝道夕食会という形で、今や地の果てまで広がりつつあるのです。
ところが、この集会による直接伝道の働きに加えて、数々の多種多様の伝道の働きが生み出されてきました。例えば、結婚式をアレンジする中で福音を伝えるウエディング・ミニストリーのスタート、家族、子育ての問題について聖書的なアドバイスをしていくメールマガジンの発行、ビジネスマンに福音を伝えるための月刊誌の発行、幅広く伝道するためのマンガ週刊誌の発行、VIPクラブ集会でのスピーチを文書にしてEメールで世界中に送信する働き等です。
この他にも、聖書経営者塾、クリスチャン実業家によるキリスト者商工会議所、クリスチャン経済団体連合会、世界中のクリスチャン・ビジネスマンを対象とするクリスチャン国際ビジネス取引所等の構想が一部すでに実現しつつあります。これらは、言わば聖霊の(働きの)バイプロダクツ(副産物)です。さらに聖霊が各人に自由に働かれていろいろなバイプロダクツが生み出されつつあります。このようなさまざまなことが、あるひとつの小さな祈り会から生み出されあるいは拡大されていることは、本当に驚くべき神のみ業というほかありません。まさに「アメージング・グレイス」("Amazing Grace")です。
7. 3つのV
旧約聖書のヨエル書2章28節に、「その後わたしはわが霊をすべての肉なるものに注ぐ。あなた方の息子、娘は預言をし、あなた方の老人たちは夢を見、あなた方の若者たちは幻を見る」とあります。神はその子供たちに聖霊を注いで、預言をさせ、夢を見させ、幻を見させて導いておられます。
天地万物を創造し、これを完璧に支配しておられる神は、一個の遺伝子にも人知をはるかに超える偉大な能力を授けておられます。神は完全・無欠なる秩序の神であって、混沌とした無秩序の神ではありません。神は私たちのために計画をもっておられます。それは災いを与える計画ではなく、平安と将来と希望を与える計画です。(エレミヤ29:11)
主はまず、私たちに聖霊を注いで、神の幻(ビジョン/Vision)を見させてくださいます。次に、ビジョンを達成するための、方法と力と備えを与えてくださいます。これが神の仕事(ベンチャー/Venture)です。そして、私たちが主を信頼して勇気をもって一歩を踏み出すと、神のベンチャーが動き出します。その結果として、ビジョンの達成すなわち神の勝利(ビクトリー/Victory)を体験させていただくのです。「Vision」 - 「Venture」 -「Victory」こそが、神が御業をなされる公式です。
あなたのなすべき事を主にゆだねよ。そうすれば、あなたの計るところは必ず成る。(箴言16:3)
あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる。(詩篇37:5)
佐々木満男(ささき・みつお):弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。