【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は英国公式訪問の第3日の9月18日、ロンドン・ウエストミンスターの大司教館でデービッド・キャメロン首相、ニック・クレッグ副首相、野党代表ハリエット・ハーマン氏とをれぞれ10〜20分間会見した。
教皇は午前10時、ロンドンのカトリック司教座大聖堂『ウエストミンスター・カテドラル』でミサを捧げた。カテドラルには、教皇ミサのためにこの朝早くから若者たち大勢の信者が詰め掛け、大型スクリーンを通してミサに参加した。ミサには、英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教や各派代表も参列した。
教皇はミサの説教で、聖職者による未成年への性的虐待に触れ、「口に出せないほどの」恥ずかしいことだとし、教会の屈辱が被害者を癒せれば、と語った。そして、これらの罪のために恥と苦しみを受けた教会もまた、犠牲者のために祈りながら、自身の清めと刷新のための努力を行うべきと述べた。
ミサ終了後、教皇は大聖堂の外で若者たちと短い時間交流した。教皇は英国の青年たちに、「私たちは愛を受け取る存在であり、神が私たちにくれた愛、その愛のために今の自分があることを神に感謝しなくてはならない」とし、「私たちはまた愛を与えるように出来ている。それは人生で非常に大切なこと」と語った。
この後、大聖堂内に戻った教皇は、今回の英国滞在では訪問できなかったウェールズ地方の使節と会見した。
さらに教皇は、英国内の性的虐待の被害者、女性4人、男性1人とも面会、共に祈りをささげ、再発防止や当局の捜査への協力などを約束した。教皇は2008年に米国とオーストラリアで、今年4月にはマルタでも、聖職者による虐待の被害者と会っている。
公営BBC放送によると、面会時間は30分から40分に及び、面会者の1人は「十分な時間で、首相との会見時間より長かったのでは」と語った。
小憩の後、教皇は女子修道会が運営する高齢者施設を訪問、夕刻にはハイド・パークで、19世紀に英国国教会の聖職者からカトリックに改宗し、枢機卿となった英国人ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿列福式の前夜祭を行った。
今回の英国訪問で、教皇が聖職者による性的な児童虐待について言及するかに関心が集まった。
教皇は16日、エジンバラへ向かうアリタリア航空機の中で報道陣に対し、聖職者による性的な児童虐待についてカトリック教会の注意は不十分だったと述べていた。
教皇が直接に、遺憾の意を表し、犠牲者と会見したことは、予測されていたとは言え、英国社会に感銘を与えた。メディアは、教皇がこの問題について公の場で行った発言の中では最も強い謝罪と報じた。
しかし、英国の児童虐待被害者のための全国組織NAPACのピーター・サンダース会長は、教皇が自分の立場が追い込まれて謝罪発言に至ったと、厳しい評価を下した。
伊紙イル・ファット・クオティディアーノの教皇庁担当解説者マルコ・ポリティ氏はAFP通信に「今回の英国訪問は、児童虐待問題一色になっている。教皇が遺憾の意を表明するだけでは世論は納得しないだろう。世論が求めているのは、過去30年間に起きたことを白日の下にさらすことだ」と語っている。