【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は9月16日午前10時半、スコットランドの首都エジンバラに到着した。16世紀に英国王ヘンリー8世が離婚問題でカトリックから決別して英国教会を設立して以来、教皇の英国公式訪問は初めて。カトリック聖職者による児童への性的虐待問題などでバチカン(ローマ教皇庁)に対する批判が高まる中での訪問となった。
教皇は、スコットランドに向かう機中で、聖職者による一連の性的虐待を知って衝撃を受けた、と語った。被害者への対応が教会の最重要課題だ、と言う。
空港で、エジンバラ公フィリップ殿下や、最後の香港総督クリス・パッテン氏に出迎えられた教皇は、続いてエリザベス2世女王の夏の滞在先ホリールードハウス宮殿で女王の歓迎を受けた。教皇と女王夫妻との会談は、和やかな雰囲気のもとに行われた。庭園で行われた歓迎式の挨拶で、教皇は英国訪問への喜びと感謝を述べた。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、宮殿名にある「ホリールード」という言葉が「聖なる十字架」を意味しているように、英国の歴史に深く根付くキリスト教の伝統を指摘した。
また教皇は、英国の人々がこれからも清廉と尊重と均衡の精神を保ち、同国の自由の根底にあるキリスト教の価値を忘れることがないようにとの希望を表明した。
エリザベス女王は歓迎の言葉で、北アイルランドの和平に対するバチカンの貢献や、社会の発展、弱い立場にある人々の擁護等におけるカトリック教会の取り組みに言及した。宗教は英国の社会生活の常に基本的な要素であり、信教の自由は寛容で民主主義的な社会において尊重されるべきもの、と女王は語った。
この後、教皇は、特別車「パパモービル」で、エジンバラ大司教館に向かった。沿道には教皇を歓迎する市民たち約12万5000人の波が続いた。大司教館前では、教皇は地元の児童や病者たちに歩み寄り、祝福した。
教皇はグラスゴーへ移動して、夕刻にベラヒューストン公園で野外ミサを主宰した。一般信徒ら約7万人が参加した。教皇はミサの大半を英語で執り行い、説教の中で、「特に若い信徒は、神への愛だけが永遠に続くことを知り、麻薬や酒などの誘惑を退けてほしい」と呼びかけ、「宗教を自由と平等への脅威とみなす声が一部にあるが、それは誤りだ」と述べた。地元出身で、熱心なカトリック教徒の歌手スーザン・ボイルさんもミサの前後に美声を披露した。
この日の参加人数は、前教皇ヨハネ・パウロ2世が1982年の非公式訪問の際に同公園で行った時の約25万人には及ばず、予想された10万人にも至らなかった。ミサの入場券は35%も売れ残ったという。
教皇は同日夜、グラスゴーからロンドンに到着、西部ウインブルドンにある教皇使節館に宿泊した。