アフガニスタン北東部バダクシャン州の森林地帯で5日、キリスト教系のNGO「国際支援ミッション」(IAM)の関係者男女10人が武装勢力の襲撃を受けて死亡した。同NGOはアフガンで40年以上にわたって医療支援を行っている団体。死亡したのは米国人6人、ドイツ人1人、英国人1人、通訳のアフガン人2人。医師も含まれている。反政府勢力タリバンは7日、犯行を認めた。
IAMによると、殺害された10人は眼科医療のチームで、同州に隣接するヌリスタン州での支援を終えて首都カブールに戻る途中に襲撃に遭った。当初は12人のグループであったが、襲撃前日にアフガン人1人が治安上の理由からグループを離脱。事件ではアフガン人1人がイスラム聖典コーランを唱えるなどして殺害を逃れたが、昼食中に突然襲われたと証言している。
IAMカブール事務所のフレンス所長は「こんな残酷な事件に巻き込まれたのは初めて。なぜだ」(毎日新聞)と衝撃を隠せない様子。IAMはスイスを拠点に、1966年からアフガンの無医村地域などを中心に医療支援を継続してきた。
タリバンのムジャヒド報道官は、所持品からスパイの証拠となる文書や、イスラム教からキリスト教への改宗を目的とした文書が見つかったと主張。「所持していた旅券を確認し、一人ずつ殺した」(同紙)と話した。IAMは、殺害された外国人医療従事者と通訳のアフガン人はいずれも「宣教師」ではないとタリバン側の主張を否定している。
キリスト教福音派最大組織の世界福音同盟(WEA)と同系列のアジア福音同盟(AEA)は8日、事件を非難する声明を発表。WEAのCEO兼国際ディレクターであるジェフ・トゥニクリフ氏は、「これら人道支援者の理由なき殺害は残虐行為に他ならず、何千という貧しい人々への支援に大きな影響を与えるものだ」と非難した。
襲われた医療チームのリーダーであったトム・リトル氏(米国人)は30年近くアフガンでの任務に当たってきた。リトル氏の妻リビーさんは米CNNの取材に応じ、同氏が現地の危険性を十分承知しており、夫から12時間ごとにかかってくる30秒間の電話で無事を確認するようにしていたと話した。事件後この連絡が途絶えたため、最悪の事態を直感したという。
WEAとAEAは、犠牲者の遺族や友人に哀悼の意を表明。アフガン政府に対しては同国で活動するすべての人道支援者の保護を訴え、また国際社会に対しては同事件に対して非難の声を共に上げるよう呼び掛けた。
アフガン北部は近年、タリバンの勢力が拡大し、米軍が戦闘を強化するなど治安の悪化が進んでいる。