【CJC=東京】米聖公会のキャサリン・ジェファート=ショリ総裁主教は、同派の同性愛者(ゲイとレズビアン)受け入れの姿勢を強く擁護、『聖公会共同体』(アングリカン・コミュニオン)の中に見られる権力集中的また強権的な均一化への動きを6月2日非難した。
英国国教会(聖公会)は、強力な聖職者ではなく各国の共同体の方針に沿うべきだ、と同主教が、米聖公会の会員200万人に宛てた書簡で主張したもの。50年に及ぶ議論の後、米聖公会は、同性愛者が『神の良い創造』であり、『洗礼を受けた指導者、聖職に叙階された人のように、教会の中で、備えられたリーダーシップの良い健全な手本』と確信するに至った、と述べている。
この5月、米聖公会ロサンゼルス教区は公然同性愛者のメアリー・グラスプール氏を補佐主教に選任した。2004年のジーン・ロビンソン氏のニューハンプシャー教区主教就任に続き、公然同性愛者の主教選任は2人目。同性愛を罪とみなしている構成者もいるアングリカン・コミュニオンの緊張を強めることになる、との警告を無視した形だ。
英国国教会の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏は5月28日、アングリカン・コミュニオンに向けて厳しい姿勢の声明を発表、公然同性愛者の主教容認について、米聖公会に属する人たちは、アングリカンの交わりから外れており、エキュメニカルな対話や教義上の議論に参加しないように、と批判した。
ウィリアムズ氏は、アングリカン・コミュニオンの霊的指導者ではあるが、その力は限られている。しかし同氏や他の英国国教会指導者は、近年、聖書が同性愛について語っていることをどう解釈するかについての不一致を克服するために権威の集中を図ってきた。
RNS通信によると、米メリーランド州フレデリックのフッド大学で宗教史を講じているデビッド・ハイン教授は、アングリカン・コミュニオンは、世界の様々な地域で成長するに伴い、50年以上にわたり信仰と教義上の問題でより大きな一致に向かって進んできた、と言う。
しかし独立志向の米聖公会は、その流れに常に沿おうというよりは、自らが許容出来る信仰と実践の「境界」の拡大に努めてきた。
ジェファート=ショリ氏は、アングリカニズムが、さらには聖公会が、確立されたヒエラルキー(教会組織)の強力な支配を逃れようとしたキリスト者によって始められたのだとして、権力と規律の集中推進を拒否している。「一元的な管理はアングリカニズムの特徴ではない。むしろ交わりとコミュニオンの多様性にこそある」と言う。
2日の書簡で同氏は、世界中の7700万人の聖公会信徒を一律に管理することは、大英帝国の支配の上に共同体を建設した植民地政策的な宣教の「精神的な暴力」と「文化的行き過ぎ」を繰り返す危険性を冒すもの、と指摘している。
「私たちは、植民地政策的な態度が続いていることに重大な懸念を抱いている。特に、多彩なコンテキストや文化に単一の見解を課そうとしていることが問題だ」と言う。
ジェファート=ショリ氏はまた、米聖公会に対する批判が、アングリカン・コミュニオンの中でも、女性司祭や主教を禁じているところから発せられている、として、他にも非公式な暗黙の同意の下に同性愛主教を認めている聖公会が存在している、と指摘した。
革新派はジェファート=ショリ氏の書簡を、米聖公会の方針を全面的に守るものであるとして歓迎している。「これは控えめではあるが独立宣言だ」と『エピスコパル・カフェ』というブログの編集者ジム・ノートン氏は言う。「総裁主教は、もはや議論の枠組みの確定をカンタベリー大主教にゆだねてはいない」。
ジェファート=ショリ主教の、聖公会の歴史再検証は、外部には当たり障りのないもののように見えるかもしれない、と、教会史専門家のダイアナ・バトラー=ベース氏。しかしその民主主義的アングリカニズムを強力に守ろうとしていることは「戦争への召集」だと指摘する。「彼女は、『これが自分たちの伝統であり、あなたはそれを破っている』と言っているが、それはウイリアム氏を帝国主義者と非難することだ」。
ウィリアムズ氏とジェファート=ショリ氏は、各管区の自治と中央の権威の問題をめぐる、非常に古くからの議論を行なっているとも見られる。バトラー=ベース氏によると、両者はアングリカニズムの理解に関しては両極端で、一致の可能性は極めて低い。
「ウィリアムズ氏は、アングリカンの一貫したアイデンティティを模索し、それをトップダウンで強制しようとする。ジェファート=ショリ氏は、自分たちは常に民主主義的であり、地域に根ざしている、と言う」が、その論争も限界点に近づいた、と見ている。