互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。
(コロサイの信徒への手紙3章13節)
今、私の手元に小さな新聞切り抜き記事があります。1991年9月23日午後13時半から地域のレンタル・スペースにおいてN先生にお話をしていただいた時の案内記事です。N先生にお会いして、従来の常識的な見方に囚われずに新しい視点に立って見ることの大切さを学ばせていただきました。
N先生と初めてお会いしたのは、今から19年前の1990年5月15日のことでした。そして今となっては最後になってしまいましたが、去年の12月16日にお会いしました。今年の5月で20周年の節目を迎える筈でした。その間の思い出は、とても限られた紙面で書き尽くせるものではありませんが、昨年お会いしたときのことから書かせていただきます。
N先生からお電話をいただきまして、武蔵溝ノ口駅でお会いし、昼食をご一緒させていただきました。そのとき、N先生がお席に座られて、いきなり、こうお話されました。「16年間考え続けて解けない問題がありました。従来の定理(法則)が間違っていたのです。それで自分なりに考えた通りに計算したらようやく解けました。人の作った法則(定理)は、それが成り立つための諸条件が必要です。1つでも欠けると成り立ちません。しかし神さまは無条件愛です。だから何でもお出来になるのです」。その話を伺いまして、私はこれからの牧師人生を「神さまの無条件愛の法則、神さまの無条件愛を分かち合って生きよう!」と志を新たにさせていただきました。そして愛用の聖書にサインをしていただきました。
そのとき、私は何故か直観するものがあり、会食後、別な喫茶店に場所を移動し、こう申し上げました。「N先生! 私が先に召されたら、イエスさまに、N先生からとてもお世話になりましたと報告します。N先生が先に召されたら、イエスさまから労いの御言葉があります」。そしてN先生と握手してお祈りをさせていただきました。そして武蔵溝ノ口駅でお帰りになられるN先生に手を振ってお見送りをしました。N先生は時間の制約を離れて永遠のときへと移されたのであります(今年1月16日召される。享年87歳)。
N先生の御言葉は、私にとっていつも新たな節目のスタートになりました。先ごろ教会にお招きし、お話をお伺いしたことがあります。そのときN先生が、こう話されました。「新しいことを始めるときは、いつでもスタートは同じです! もっと早く気がついて始めていたら良かったのにではないのですよ!」。私事になりますが、私は今年「61歳」、ゼロ年、「1」からのスタートです。N先生の御言葉通り、今、新たなスタートの年を迎えております。
振り返りますと、田園調布駅界わいの喫茶店で数奇な出会いを与えられ、そのとき以来、ほんとうにお世話になりました。この場をお借りし、神さまの無条件愛の法則に生き、赦しの奇跡を分かち合いたく願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
津波真勇(つは・しんゆう):1948年沖縄生まれ。西南学院大学神学部卒業後、沖縄での3年間の開拓伝道、東京での1年間の精神病院勤務を経て1981年7月、多摩ニュータウン・バプテスト教会に着任。現在に至る。著作に、「マイノリテイ(少数者)の神」(1985年)、「一海軍少将の風変わりな一生の思い出」(1990年)、「出会い」(齋籐久美・共著、1991年)、「讃美歌集・主よ来たりませ」(1993年)、「沖縄宣教の課題」(2000年)。作曲集CD「生命の始まり」(1998年)、「鳥の歌」(2003年)。