【CJC=東京】13世紀にチンギス・カンの孫が敬意を払うよう当時の教皇に要求した文書など、これまでバチカン(ローマ教皇庁)の『秘密文書館』が所蔵していたものの中から105点を高精度に複製し「バチカン秘密文書」として刊行された。その中の19点は初公開という。
『秘密文書館』とはいうものの、1881年以来、研究者には公開されているが、一般には門を閉ざしたままだった。
「バチカン秘密文書」は、ベルギーの出版社VdHが2009年10月1日刊行したもので240ページ(ISBN9789088810077)。米ボーダーズ書店は167・95ドル(約1万5000円)、米アマゾンでは99・50ドル(約9200円)で販売している。
今回収録されたものの中で、注目されるのは1246年11月11日と記されているチンギス・カンの孫モンゴル帝国第3代皇帝グユクからインノケンティウス4世に宛てた書簡。日付が確定出来る同帝国の公文書として現存するものの中では最古。書簡は教皇に、その“諸王”と共に「礼を尽くし、敬意をはらうため」に「服従」の行為として中央アジアを訪問するよう要求したもの。そうしなければ「敵と見なす」と脅迫している。
教皇の政治的役割を浮き彫りにしたものもある。1863年、米国南部11州が結成したアメリカ連合国(南部連合)のジェファーソン・デービス大統領は、教皇ピオ9世に、米国に荒れ狂ってりう内戦は全て「北側の侵略」のためだ、と書き送っている。ナチの指導者ヒトラーにピオ11世が1934年に書いた書簡、昭和天皇からピオ12世に宛てた書簡もある。
サンピエトロ大聖堂を手がけたミケランジェロが資金難を訴えた手紙、北米先住民の部族が樺の樹皮に書き付けたローマに宛てた請願、スコットランドのメアリー女王からの訴えも見られる。
「謎のオーラがいつも聖座のこの重要な文化施設を取り巻いていた。それは名称自体によって立ち入ることの出来ない秘密だとほのめかされていたためだ。文学作品やメディアの報道のおかげで有名にもなったためでもある」と、バチカンの文書管理責任者ラファエレ・ファリーナ枢機卿が同書の序文に記している。