イスラム教徒の男がパキスタンの8学年(日本の中学2年生に相当)のクリスチャン少女を誘拐、2日間にわたって暴行を加えていたことが17日、国際キリスト教コンサーン(ICC)の報告で明らかになった。
ICCによると、イスラム教徒のムハマド・アクマルという男が8月15日、フルシード・ビビという別の男と一緒にクリスチャンの少女を誘拐し、男の所有する農場に連れ込んだ。そこで2日間にわたり少女に暴行を加えたという。その後、もし誘拐されて暴行を受けたことを口外すれば殺すと脅して少女を解放したという。
少女の家族はICCに対し、今回の事件を地元警察に通報したが、警察は犯人の男をまだ逮捕していない、と話している。なお、男は同地方で影響力のある地主だという。地元警察は今回の事件について、「ムハマドはすでに村から逃亡してしまったが、逮捕に向けて全力を尽くしている」と述べている。
イスラム教の勢力が強く、イスラム教の聖典に基づいてキリスト教徒をイスラム教徒に従属する立場の市民とみなすパキスタンでは、少数派であるキリスト教徒がハラスメントや暴行の対象にされやすい環境にある。ここ2カ月の間にも、12人のキリスト教徒がイスラム教徒によって殺害されている。パキスタン政府は、キリスト教徒に対する暴行を阻止する対策に何度も失敗している。
ICCは今回の事件について、「極めて侮辱的である」と強く非難する声明を発表し、パキスタン政府に対し、犯罪者を司法の場に引き渡すよう強く呼び掛けた。ICCのジョナサン・ラッチョ氏は、「イスラム教徒が8学年の少女を誘拐し、暴行を加えるというのは極めて侮辱的なことだ。被害者が暴行を受けた傷は生涯残ることになる。パキスタン政府に対し、今回の犯罪の過程について全力で調査し、犯罪者を司法の場で正当に裁くことを求める。世界中のキリスト教徒に対し、パキスタン大使館に加害者逮捕に向けて全力を尽くすように呼び掛けてほしい」と述べた。
パキスタンは、少数派であるキリスト教徒の身の安全が政府によって確保できていないとして、世界中のキリスト教徒から非難されている。パキスタンでは、法律によりイスラム教の聖典コーランを侮蔑する者に対し、死刑・無期懲役を含む懲役刑、その他罰金などの刑が科されることになっている。
世界5億6千万人のキリスト教徒を代表する世界最大のエキュメニカル団体、世界教会協議会(WCC)は、今月初めパキスタン政府に対し、キリスト教徒を迫害する根源となっている冒とく罪を撤廃するよう訴えている。
なお、オープン・ドアーズのワールド・ウォッチリストによると、パキスタンはキリスト教迫害度の強い国で第13位にランク付けされている。パキスタンでのキリスト教徒の割合は5%未満。同国の75%はスンニ派イスラム教徒で、20%がシーア派イスラム教徒となっている。