聖書の言葉に対する見解で、米国でも保守派・リベラル派の活動家で見解の隔たりがあることがさまざまな課題に対する活動の仕方、優先すべき課題の認識から示唆されている。今回、保守派・リベラル派それぞれについて聖書に対する見方、優先して解決すべき問題などについて調査を行った結果、双方ともに人生において宗教は大切であることが示されたが、聖書に書かれている言葉の理解の仕方については大きな隔たりがあることが明らかになった。
15日に発表された米アクロン大学のブリス・インスティチュートが米パブリック宗教リサーチ(PRR)と共同で行った09年度宗教活動家調査によると、米キリスト教保守派の半数近く(48%)は、聖書の言葉は神の言葉であると信じているものの、リベラル派では聖書の言葉がそのまま神の言葉であると信じている人の割合はわずか3%にとどまった。
宗教活動における優先課題も保守派とリベラル派では隔たりが見られた。保守派の優先課題として取り上げられたのは、中絶問題(83%)、同性愛問題(65%)となったが、リベラル派ではこれらの問題解決が重要であるとするクリスチャンの割合は10%を下回った。一方でリベラル派からは優先課題として貧困問題(74%)、ヘルスケア問題(67%)、環境問題(56%)、雇用・経済問題(48%)、イラク戦争(45%)が挙げられた。またこれらの課題への見解についても双方で隔たりが見られた。
中絶問題については、保守派ではほとんどすべてのクリスチャンが中絶を合法化することに反対(95%)であったが、リベラル派のクリスチャンの8割は中絶合法化を支持する姿勢を示した。またリベラル派の26%は、中絶はどのような場合でも許可されるべきであるとの見解を示し、54%は大概の事例について許可されるべきであるとの見解を示した。
また同性結婚については、保守派では82%の人々が反対を示したが、リベラル派の59%は同性婚を支持する見解を示した。またリベラル派の3分の1の人々は、同性婚が普通の結婚と同じ様に法的に認められるべきであるとの見解を示した。ヘルスケア問題については、たとえ患者の選択肢が限られるとしても、米政府が米国民すべてを包括する保険を提供すべきだとの見解に合意を示したクリスチャンはわずか6%でしかなかったが、リベラル派では同見解について78%が合意を示した。
パブリック宗教リサーチ所長のロバート・ジョーンズ博士は、「保守派・リベラル派双方の信仰深い熱心な活動家を対象に調査を行った結果、人生におけるキリスト教の見解、また政治活動への信仰の引用の仕方について大きな隔たりがあることが明らかになった。この調査結果から、キリスト教活動家が政策問題についてどれか一つの立場しか示さないという考えを持つのは間違いであることが示された」と述べている。
一方保守派・リベラル派双方において、公共生活を送る中で、宗教が何かしらの役割を担うべきだという考えには合意が示された。保守派の81%は、米政府は教会組織と州組織をはっきりと分離すべきだとの見解を示したものの、リベラル派ではそのような見解を示すクリスチャンの割合は21%にしか至らなかった。保守派はどちらかというと、前提として米国はキリスト教国家として建国されたと信じる姿勢が強いとみられる。
今回調査を行った保守派の構成割合は、福音主義プロテスタントが54%、ローマカトリック教徒が35%、その他主流派プロテスタントが9%となった。一方リベラル派に含まれたのは主流派プロテスタントが44%、ローマカトリック教徒が17%、福音主義プロテスタントが10%、異宗教間活動組織・団体が12%となった。それぞれの組織のキーパーソンとして活動する活動家をターゲットに、リベラル派の活動家4200人、保守派活動家3000人からランダムに調査対象者を選び出し、09年春から夏にかけて10ページに及ぶ調査を行った。リベラル派からは1886通の返答、保守派からは1123通の返答が得られた。