鑑定と称して不安をあおり高額な印鑑を売りつけたとして東京・渋谷の印鑑販売会社「新世」の社長を含む7人が逮捕された事件の初公判が10日、東京地方裁判所で行われ、社長の田中尚樹被告(51)は「間違いありません」と起訴事実を認めた。
同社営業部長の古沢潤一郎被告(40)と同社も同じく特定商取引法違反の罪に問われ、田中被告とともに起訴事実を認めた。警視庁公安部は、同社が販売実績や顧客情報などを世界基督教統一神霊協会(統一協会)に報告するなど、同社を統一協会の関連会社とみて調査を進めてきたが、今回被告側が起訴事実を認めたことにより、統一協会関連会社が「霊感商法」を行っていたと自ら認めたことになる。
検察側は冒頭陳述で、田中被告らがいずれも統一協会の信者であり、「印鑑販売を一連の感化・洗脳の最も初期の段階に位置づけ、困惑させる行為を繰り返した」と指摘。2000年に同社が設立されて以来、捜査で押収された契約書などから判明しただけでも、印鑑購入者は330人を超え、契約金額は2億3200万円に及ぶとした。
同事件を巡っては、印鑑販売拡大などを指示し、事件に深く関わったとして6月には統一協会の南東京教区本部(渋谷区)の家宅捜索が行われた。また、同社事務所からは、印鑑購入者を統一協会に入信させるためのマニュアルが押収されるなどした。
これを受けて、統一協会の徳野英治会長(54)は7月、同社との関係を否定しながらも、社会に心配をかけ、一般信者にも迷惑をかけたなどと理由を説明して辞任している。
起訴状などによれば、田中被告らは07年10月から今年2月までの間に、渋谷駅周辺で30〜60代の女性5人を勧誘。「先祖の因縁がある。このままでは家族が不幸になる」などと不安をあおって、1本16〜40万円する印鑑を13本売りつけたとされている。逮捕された7人の内、女性販売員5人に対してはすでに罰金100万円の略式命令が出されている。