江戸時代初期にイエズス会により刊行された書物群「キリシタン版」の一つである「ひですの経」が、米国ハーバード大学の図書館に保管されていることが分かった。日本大学商学部の折井善果講師による調査で判明。15日発売の月刊誌「日本古書通信」で発表される。
「ひですの経」は1611年、イエズス会が長崎で印刷した約180ページの書物で漢字とひらがなで書かれている。「ひです」はラテン語で「信仰(fides)」の意。1907年にドイツの古書店目録に掲載された後、所在不明となっていたが今回の調査により、1921年にオークションにかけられ、競り落とした購入者が保管、その後ハーバード大に寄贈されていたことが分かった。
「キリシタン版」は日本を訪れた宣教師、アレッサンドロ・ヴァリニャーノ司祭が教団の教育事業の一貫として計画。50点以上もの書物が刊行されており、現代では言語史および印刷史上、貴重な資料となっている。