世界教会協議会(WCC)がアジアキリスト教協議会(CCA)と共催した東山荘会議20周年記念国際会議が10月17日から21日まで、静岡県御殿場の日本YMCA東山荘で開催された。朝鮮キリスト教連盟の姜永燮委員長ら4人のほか、日本、韓国、中国、ロシア、欧州、北米などから55人の教会指導者たちが参加して「朝鮮半島・東北アジアの引火点」を主題に会議を行った。
WCCが1984年10月29日から11月2日まで東山荘で「東北アジアにおける平和と正義・紛争の平和的解決」をテーマに行った国際会議は、韓国での統一運動を活性化し平和の芽を出す機会となった。また、冷戦下にあった北朝鮮と韓国の平和統一と和解の実現はクリスチャンたちの宣教の課題という認識を植えた。その後、在日大韓基督教会、韓国の各教会、朝鮮キリスト教連盟、エキュメニカル関係の協力によって南北の教会の歴史的な出会い、協議、会議が実現された。
開会礼拝では、20年前にWCC総務として朝鮮半島の民主化と統一に向けた努力を支持したフィリップ・ポッター博士が、アモス書5章、ホセア書6章、ミカ書6章を引用して平和と正義のための預言者的な証しを交えて御言葉を伝えた。WCC国際関係教育委のナイナン・コシー委員長は地政学的見解からアジアの最近の傾向について発題した。冷戦時の核対立を振り返って「第二の核時代」について説明し、「今後核軍備をする国は、ミサイル発射後、数分間で到達する至近距離にいる敵国を相手にすることになる」と警告した。
米・エモリー大名誉学長で前・在韓米大使のジェームス・レイニー博士は、朝鮮半島は緊迫した状態にあり、早急な行動が必要と述べた。同博士は自身を「クリスチャン・リアリスト」と呼称し、全人類は神の形に似せて創造された存在であり、個々人は敬意を払われる基本的権利を有していることを知ることが大切と述べた。また、米国が北朝鮮の安全を保障して孤立化を避けることで人々の不安を取り除くべきだと提案した。
韓国・高麗大の韓培浩博士は南北関係の歴史に言及し、南北統一の準備段階として形成する「連合」への「道路地図(ロードマップ)」は依然として同意を得ていないが、太陽政策と2000年6月の南北共同宣言は二国の関係改善に対する期待を高める機会になったと述べた。
朝鮮キリスト教連盟の姜永燮委員長は演説の中で、東山荘会議が20周年を迎えたことは歴史的に重要とし、朝鮮半島の平和統一を支援する中でエキュメニカル連帯の強化に貢献したことを評価してWCCとCCAに感謝の意を表明した。米国の反北的な動きを抑える働きと共に、2000年6月15日の南北共同宣言実行を後援する上で警戒を続けるよう「この危機の時代にある」すべての教会に対し呼び掛けた。韓国基督教教会協議会の白道雄総務は「平和的な共存(が実現すること)で、逆流なき一本の流れになると信じる」と述べた。韓国の国家保安法の廃止や太陽政策の維持に反対する保守派グループの声が強まっていることを指摘して、韓国基督教教会協議会は朝鮮半島の平和統一と人権、民主主義のためのエキュメニカル共同体への参加を続けると明かした。
韓国の梨花女子大学の名誉教授で1988年にNCC民族統一と平和に関する韓国キリスト教会宣言の初案責任者だった徐洸善博士は、聖書研究で当時の資料を提示し、参加者たちは4つのグループに分かれて宣言文の内容について協議し、韓国NCCの現状を考慮した上で文意を再整理する方針を示した。続いて大阪経済法科大の武者小路公秀(むしゃこうじ・きんひで)教授は、朝鮮半島での力学を理解するためのタカ派とハト派の分析枠を提案し、また、各国は自ら否定的な過去に向かうべきでないと話した。また、外交干渉をする日本を批判し、朝鮮半島の紛争解決においてUN(国連)より大きな役割を果たしていくよう提起した。
日本および米国、カナダ、ドイツのエキュメニカル・パートナーの代表者たちは、東山荘プロセスの枠組みにおける各々の活動の評価を行った。そして協議会は、以下の勧告を含む、朝鮮半島の平和に向けた将来のエキュメニカル活動のプロセスを明確にした。
○米国と北朝鮮との間の関係の正常化と不可侵条約の締結は、休戦状態を終了し、それを平和条約に置き換えるための確かな基盤を提供するだろう。米国と北朝鮮の間の和解は、その地域における緊張緩和への鍵である。
○日本による、より自律した地域政策と役割が、地域の安定化と平和、安全のための雰囲気を作り出すために必須である。2002年9月17日の日本と北朝鮮で合意した平壌宣言の実行が、この過程を促進するだろう。
○食料や、薬品、他の投入物による人道支援は、日本、米国その他の国によって、条件を付け加えられることなしに続けられるべきである。人道は、政治目的のために濫用されるべきではない。基盤となる経済条件と取り組むために、提供国は、エネルギー供給や開発援助のような他の形の支援を考えるべきである。
○北朝鮮に対する経済制裁を取り除くことは、社会の様々な領域における進歩と、よりよい生活水準に導くだろう。米国と日本は、自らの対立と孤立化政策における政治的な手段として制裁を使用することを控えるべきである。
○参加者は、朝鮮の平和と統一を促進することに関心をもつ諸教会や個人、機関のエキュメニカル・ネットワークをつくるための実行グループを召集するためにWCCとCCAを支援する。
在韓大韓基督教会は第37回総会期(1983−85)で「南北平和統一宣教委員会」を特別委員会として承認した。第39回総会期(87−89)には毎年8月15日の直前の日曜日に「民族の和解と統一のための平和統一主日」礼拝を行ってきた。同時に、「祖国の平和統一と宣教に関するキリスト者東京会議」をこれまでに8回開催した。また、朝鮮キリスト教連盟への公式訪問は4度実現した。このような世界教会の宣教協力と運動によって南北、また海外のすべての同胞たちが不信と敵対感を越えて親近感と信頼を構築し、民族統一の流れのための大きな助けになることを期待する。
在日大韓キリスト教会 朴寿吉総幹事