軍の介入により大統領が退陣に追い込まれ、国際社会から「クーデター」だと非難されるなど、情勢不安が続くアフリカ南東部のインド洋の島国マダガスカルで、同国で奉仕していた宣教師が海外へ避難する事態になっている。
世界最大のペンテコステ派教会であるアッセンブリーズ・オブ・ゴッドが配信する「AGニュース」によれば、米国務省の勧告により、アッセンブリーズ・オブ・ゴッド世界宣教会(AGWM)は、マダガスカルで奉仕をしていた宣教師家族4組を同国からケニアの首都ナイロビに避難させた。
同教会のアフリカ地域担当責任者であるマイク・マクカラフリン氏は、「軍がそれぞれが支持しようとする側に立ち分かれてしまっている」「米大使館は米市民にこの島から避難するよう強く呼びかけ、現在、米大使館の駐在員までも避難させている」と状況を語った。マクカラフリン氏によれば、AGWMは今月14日に宣教師の避難を決定したという。
現地の報道などによれば、同国では今年1月以降、マーク・ラベロマナナ大統領(59)の退陣を求めるデモが多発するようになり、130人以上が死亡する混乱が続いていた。そのような状況で今月16日、これまで中立を保っていた軍の一部が反大統領派につき、大統領府に突入。軍は、首都アンタナナリボ前市長のアンドリー・ラジョエリナ氏(34)に全権を移譲し、18日には憲法裁判所が追認。21日には、ラジョエリナ氏が暫定政府の大統領として就任した。
だが、アフリカ連合(AU)は「クーデターに等しい」として同国の加盟資格停止を決定。米国も「非民主的で法支配に反する」として人道支援を除くすべての援助を停止すると発表。同国の旧宗主国であるフランスのサルコジ大統領も早期の大統領選挙実施を求めるなど、国際社会は新政権を非難する姿勢を示している。
同教会の通信部門責任者のランディー・ハースト氏は、「マダガスカルの事例は、今日の世界で我々が教会として、世界中の宣教師とまた仲間の信徒らのために、より熱心にとりなしの祈りをささげることが求められているということを示すものだ」と指摘した。
同国では今月初め、同国で奉仕する世界改革教会連盟(WARC)所属の牧師が、キリスト教徒の軍人らに対して殺人を犯してはならないと、ラジオ放送で訴えるなどしている。
その牧師がWARCに語ったことによれば、今回の混乱で退陣に追い込まれたラベロマナナ大統領はチャーチ・オブ・クライストの信徒会副代表を務めるなど、教会で一定の役割を担っていたため、現在同国の教会は非常に緊張した状態にあるという。
事態を受けてWARCのクリフトン・カークパトリック議長は、「我々は同国の歴史において、今教会が非常に複雑な情勢にさらされていることを認識している」と声明を発表。「我々は、同国とまた同国の教会を祈りのうちに置いており、この混乱で失われた命、財産の破壊、人々がさらされている恐怖について非常に残念に思っている。我々は、政治指導者、教会指導者がこの不一致に対して平和的な解決策を求めることで合意することを祈っている」と語った。