【エルサレム=ENI・CJC】エルサレムのイスラエル研究所(JIIS)の調査では、信仰にあまり関心のない「世俗的な」市民の方が、キリスト教に寛容なことが分かった。同研究所のアムノン・ラモン氏は、矛盾の多い複雑な状況にあることを調査が示した、と3月16日語った。「信仰深いか否かが、回答を大きく支配する」と言う。
調査は市民500人が、キリスト教信者への対応について電話質問に回答する形で行われた。
調査では、若者層のキリスト者への寛容度が30歳以上に比べて低いことが分かった。教育レベルが高く、高収入で、アシュケナジー系であるとか、西欧の背景を持っている人の方がキリスト者への寛容度が高い。
「調査は、全てのキリスト者がユダヤ人の敵ではないことを若者層に納得させるため、さらに努める必要があることを示している」とメルキト典礼カトリック教会のエリアス・シャクール大主教は語った。
回答者の約52%がイスラエル国内外にキリスト者の友人がいない、と言う。イスラエルにはキリスト者15万人が居住しており、その内12万人はアラブ系市民だ。
「世俗的な」市民の91%が、十字架を身に着けている人を見ても気にならない、と答えているが、宗教的とか超正統派と自認している人では6割が不快だと言う。
前者の8割は、ユダヤ教徒が教会堂に入ることは許されていると考え、国外では実際に教会を訪れているが、後者の83%は、教会を訪れることは禁止、と信じている。
キリスト教は「偶像礼拝」だと宗教的なユダヤ人では78%が信じているが、世俗的な人の66%は、そう考えていない。
ラモン氏は、調査からは全体に前向きな姿勢が見られる、と言う。回答者の74%は、キリスト者は皆ユダヤ人への伝道者、ということには同意しないし、十字架を身に着けた人を見ても不愉快とは感じていない。さらに「世俗的なユダヤ人」の56%は、イスラエル国防軍に従軍しているキリスト者兵士が誓約する際に新約聖書を用いることが許されるべきだ、と考えているが、宗教的なユダヤ人の62%は「トーラー」だけを用いるべきだ、としている。
キリスト教に関する教育については、「世俗的ユダヤ人」の68%が学校で教えるべきだとし、新約聖書も教えるべきとする人も52%いる。ただ正統派の73%、超正統派では9割が、どんな形であれ、学校でキリスト教を教えることには反対だ。
キリスト教団体が新会堂建設のためエルサレムで土地を購入することを国家は阻止すべきだ、という意見は世俗派で64%、宗教的とする人では95%に達している。またエルサレムがキリスト教にとっても中心だということに同意する人は全回答者の半数だけだった。
「今回の調査で前向きと評価できるところは、エルサレムの重要性で反目を招いたにもかかわらず、イスラエル人に寛容が見られたことだ。ただほとんどのユダヤ人にとって、エルサレムを他の人々と分かち合うことが困難なことは分かった」とラモン氏は指摘している。