複数の車が絡む衝突事故に巻き込まれ、橋から宙づりになるも、救出されるまで祈り続け、無傷で助かったトレーラー運転手の女性がその体験を語った。
事故は3月1日、米中東部のケンタッキー州ルイビルとインディアナ州ジェファーソンビルの間を流れるオハイオ川に架かったジョージ・ロジャース・クラーク記念橋で発生した。事故を捉えたドライブレコーダーの映像は、反対車線に出てきた黒のピックアップトラックがトレーラーに衝突する瞬間を映し出している。
地元テレビ局「WDRB」(英語)によると、ピックアップトラックを運転していたのは、トレバー・W・ブランハム容疑者(33)。外側車線に停車していた車と衝突した後、コントロールを失い、さらに別の車に衝突。その後、シドニー・トーマス(26)さんが運転するトレーラーに衝突したという。
この衝撃で、シドニーさんが運転するトレーラーはガードレールを突き破り、運転席部分が宙づり状態に。シドニーさんは幸い、車外に放り出されることなく無傷だったが、宙づりになった運転席部分に閉じ込められてしまった。
5歳の息子の母親であるシドニーさんは、事故から約1カ月半がたった5月中旬、地元テレビ局「WHAS」のインタビュー(英語)に応じ、自身が経験した試練を振り返り、神の介入が自らの救出に一役買ったと信じていることを語った。
「皆さんは時々祈ると思います。私も祈りますが、罪深いことに、神が聞いていないと思うことがあります。でも、あの日、神は聞いてくださったのです」
シドニーさんの父親で、自身も長年トレーラーの運転手をしているマーク・トーマスさんもまた、娘の生還には奇跡的な働きかけがあったと信じていると語った。マークさんは、娘のトレーラーが橋からぶら下がっているのを見た瞬間、事態の深刻さに気付いたという。
事故現場に向かおうと、ジョージ・ロジャース・クラーク記念橋の横に架かるジョン・F・ケネディー記念橋を渡った際、「ふと右を見ると、(トレーラーの)車体が空中にぶら下がっていました」とマークさん。「あれ(シドニーさんの救出)は、神が私にご自身を現してくれた以外の何ものでもありませんでした」と話した。
トレーラーの運転席部分がオハイオ川から約30メートルの上空にぶら下がっている間、シドニーさんは、少しでも動けばトレーラーが水面下に突っ込むかもしれないと恐れ、動かずにいたという。
「私はそこに座って、ただ祈り始めました」
救出に向かった地元の消防士たちは、約40分にわたり、シドニーさんがいる運転席部分にたどり着こうと努力を続けた。最終的に、消防車のはしごからつり下げられた消防士のブライス・カーデンさんが、シドニーさんの元にたどり着いた。この劇的な瞬間、カーデンさんはシドニーさんに共に祈れないかと尋ね、2人は神の介入を求めたという。
「彼女(シドニーさん)はたくさん祈っていました。そして私も彼女と共に祈りました」
シドニーさんが無事に引き上げられたとき、それは2人の祈りが聞き届けられた瞬間だった。
シドニーさんは、ジョージ・ロジャース・クラーク記念橋を再び渡るつもりはないというが、助かったことに深く感謝していると語った。そして、神が自身のために目的を持っているという信念を抱き、恐れずに生きることを誓った。
「神が私をここまで連れてきてくださったのには理由があり、私は人生の目的を果たさなければなりません。そして、あの(事故の)ような何ものも、私が主のためにすべきことを止めることはできません。なぜなら、神が私をそこから救い出してくださったからです。主は、私が残りの人生を恐怖の中で生きることを望んではおられないのです」
WDRBによると、ブランハム容疑者は4件の無謀な危険行為を行った罪と、免許停止中に運転した罪で起訴された。ブランハム容疑者は既に保釈されているが、この事故で複数の骨を折るけがを負っており、現在は車椅子生活を送っている。事故を巡る審理は6月中旬、ルイビルの大陪審で行われる予定。