ヒンズー教徒が多数派を占めるインドでこのほど、少数派のキリスト教徒の最高裁判事が誕生した。同国でキリスト教徒が最高裁判事に就任するのはこれが初めてではないが、同国のキリスト教界は「自分たちの中の一人が司法の最高位に任命された」と歓迎している。
インドの最高裁は現在、長官1人と判事33人で構成されている。今月9日に宣誓式が行われ、キリスト教徒のオーガスティン・ジョージ・マシ氏を含め、新たに最高裁判事に任命された3人が、ダナンジャヤ・イェシュワント・チャンドラチュード最高裁長官に宣誓した。
インドのキリスト教系人権団体「ユナイテッド・クリスチャン・フォーラム」(UCF)の全国コーディネーターであり、カトリック教会のデリー大司教区で「カトリック協会連合」(FCAAD)の会長を務めるA・C・マイケル氏は、この決定を称賛。アジア最大のカトリック通信社であるUCAN通信(英語)に対し、「マシ氏はその公平な判断で知られています」と述べ、マシ氏の就任は正義を求める全てのインド人を助けることになるだろうと語った。
また、「判事やその他の憲法上の役職の任命に、宗教は関係ないというのが私の確信です。(判事などの任命において)大切なのは、その人の誠実さと高潔さであり、その信仰ではありません」と主張。14億人を超える同国の人口の約2パーセントに過ぎないキリスト教徒が、その信仰を理由に最高裁判事などの役職から排斥されるべきではないとする考えを示した。
インドのカースト制度における被差別民「ダリット」の権利を擁護する活動を行っている弁護士のトーマス・フランクリン・シーザー氏は、マシ氏がインド北部のパンジャブ州出身で、同州で弁護士と裁判官を務めた経験から、「貧しく、虐げられた声なき人々へのより良い理解を持つことでしょう」と語った。
マシ氏は1963年、パンジャブ州ロパール生まれ。理系学部卒業後に法律を学び、87年にパンジャブ、ハリヤナ両州の弁護士となった。その後数年、最高裁で争われる訴訟を扱う弁護士として活動。2008年にはパンジャブ州・ハリヤナ州高裁の追加判事に任命され、追加法務長官にも就いた。そして今年5月からは、前職のラジャスタン州高裁長官を務めていた。