米国内の教会に対する襲撃事件が今年の第1四半期だけで69件発生し、例年に比べ大幅に増加していることが、最近発表された報告書で明らかになった。
「教会に対する敵意」(英語)と題された報告書は、米首都ワシントンに拠点を置く保守系シンクタンク「家庭研究協議会」(FRC)によるもの。過去のデータは、2018年から22年までの5年間における教会に対する襲撃事件を記録した、昨年12月発表の報告書に基づいている。
報告書によると、今年の第1四半期のうち、1月は襲撃事件が最も多く43件発生しており、2月は14件、3月は12件だった。
今年の第1四半期に発生した襲撃事件の件数は、過去5年間の第1四半期に比べ著しい増加を示している。第1四半期に発生した教会に対する襲撃事件は、18年は15件、19年は12件、21年は14件、22年は24件で、20年に至っては0件だった。
報告書は、教会に対する襲撃を「破壊行為」「放火・不審火」「銃関連」「爆発物関連」「その他」の5つのカテゴリーに分類。今年の第1四半期における教会に対する襲撃は、53件が破壊行為、10件が放火・不審火、3件が銃関連、3件が爆発物関連、2件がその他だった。また、破壊行為のうち2件は、他の複数のカテゴリーにも分類された。
これらの教会に対する襲撃事件は、全米29州にまたがっている。ノースカロライナ州が7件と最も多く、次いでオハイオ州とテネシー州がそれぞれ5件、フロリダ州、ミズーリ州、ペンシルベニア州がそれぞれ4件だった。
カリフォルニア、モンタナ、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴンの各州はそれぞれ3件、コロラド、コネチカット、ジョージア、イリノイ、ケンタッキー、ルイジアナ、メリーランド、マサチューセッツ、ミシシッピ、ネブラスカ、ニューメキシコ、ノースダコタ、オクラホマ、サウスカロライナ、テキサス、バージニア、ワシントンの各州はそれぞれ1件だった。
破壊行為の例としては、ホーリーネーション教会(テネシー州)で礼拝堂が破壊され、視聴覚機器が盗まれた事件や、デラブローク長老教会(ノースカロライナ州)で消火器が撒き散らされた事件などが挙げられた。
ジーザス・イズ・アライブ・ワールド・センター(ペンシルベニア州)では、音響機器、講壇、ステンドグラス、ピアノが破壊された。また、犯人は椅子を投げつけたり、消火器をかけてカーペットを汚したりした。
放火・不審火の例としては、空き家となっていたポートランド韓国人教会(オレゴン州)の不審火や、テキサス州オースティンの伝統的黒人教会が放火とみられる被害に遭い、20万ドル(約2650万円)の損害が出たことなどが挙げられている。
銃関連では、テネシー州ナッシュビルのキリスト教学校「カベナントスクール」で発生した銃乱射事件や、ミズーリ州ベルサイユのメノナイト教会に銃弾50発が打ち込まれた事件、プレイズ・テンプル・バプテスト教会(ルイジアナ州)で深夜に銃撃があり、4人が病院に搬送された事件などが記載されている。
爆発物関連では、聖ドミニコ・カトリック教会(ペンシルベニア州)の外でパイプ爆弾が発見された事件や、グレースライフチャペル(オハイオ州)に対する爆破脅迫事件、テネシー州ナッシュビルの教会に対する偽爆破予告などが記載されている。
その他に分類された事件としては、クロスファイア教会(オレゴン州)における刺傷事件が一例として挙げられている。
破壊行為に分類された事件のうち2件には、明確な政治的メッセージが見られた。聖ヨセフ・カトリック教会(ミズーリ州)では、犯人が建物の外壁に「TRANS PWR」という言葉をスプレーで描き、LGBTQ(性的少数者)への支持を表明。フロリダ州リバービューの教会では、犯人が「Womens body womens choice」(女性の体は女性が選ぶ)というフレーズを敷地内に落書きしており、中絶権利の擁護に対する共感を示していた。