【CJC=東京】米国のテレビ伝道者ロバート・H・シュラー牧師の宣教活動が混迷している。カリフォルニア州オレンジ郡ガーデングローブに建設した総ガラス貼りの教会堂「クリスタル・カテドラル」は米国の代表的なメガチャーチとして有名になった。シュラー氏は伝道放送「力の時」で知られているが、ここへ来て大不況のあおりを受け、また家族間の不和もからまって宣教活動が危機に見舞われている。
借入金返済のために6500万ドル(約59億円)以上ものオレンジ郡内の不動産売却も検討中。昨年11月29日には子息で後継者と目されていたロバート・A・シュラー氏(54)がクリスタル・カテドラルの主任牧師を辞任した。
H・シュラー氏が、教会財政の3割を支えている多額献金者の集団である『イーグルズ・クラブ』のメンバーに宛てた最近の手紙によると、収入は昨年ほぼ500万ドル減少した。このままでは伝道番組も継続出来ない、と支援を要請している。「2008年の最後の月は私たちの宣教にとっては破滅的だった」と言う。
景気後退の影響を受けたことは確かだが、この10年間、慎重に計画されたH・シュラー氏の子息へのリーダーシップ移管が大きくつまずいたことは明らかだ。
個人の力で推進されて来た宣教に共通の問題でもある。創立者が引退したり、死去すると、勢いを急速に失うか、場合によっては崩壊する。
ボストン大学の宗教社会学者ナンシー・アンマーマン氏は、教会員が献金を教会といった組織にではなく、牧師個人に結び付けて捉えている、と指摘する。伝道番組の視聴者は「献金を普段ささげている牧師以外の人が出ている時には、おそらく献金も少ないのではないか。番組には視聴者が特に忠実に見るようになる何かがある」とアンマーマン氏。
強烈な出演者に導かれて教会が大きくなり、同時にそこに基盤を置くテレビ伝道は1980年代には盛んだった。しかし現在目立つのは、オーラル・ロバーツと故D・ジェームズ・ケネディの「コーラルリッジ・アワー」など一握りに過ぎない、と言うのはキリスト教メディア専門のカルヴァン大学クエンティン・シュルツェ教授。「もうテレビ番組と連動したメガチャーチを維持出来ない。シュラー氏やジミー・スワガート、オーラル・ロバーツ各氏が代表だった時代はもう終わった。『力の時』がやって来られたことすら、驚くべきことと思う」と言う。
H・シュラー氏、その家族、さらにはカテドラル側もコメントを断っており、A・シュラー氏は、インタビューを求めるAP通信の電子メールにも応答していないという。
シュラー家は教会を家業と考えており、子息のA・シュラー氏が2006年に後継者とされた時も、クリスタル・カテドラルが属している米改革派教会は承認している。
しかしカテドラルは昨年11月29日、A・シュラー氏が主任牧師を辞任した、と発表した。教会関係の放送局から解任されてちょうど1カ月後のことだった。
当時H・シュラー氏は、ニュースリリースで「私たちは、宣教の方向と理念についてそれぞれの考えがあり、苦闘して来た」と述べている。
教会のウエブサイトには、心配する教会員やテレビ番組のファンなどが多数、混乱に抗議するコメントを書き込んでいる。中には献金を止めることを示唆したり、教会自体から離れると言う人まで出ている。