少し古い話だが、2010年、パキスタンでワールド・ビジョンの職員7人がアルカイダの武装勢力に殺害された。武装勢力は彼らを一列に並べ、一人ずつ射殺したのだ。現場に警察が向かっていることが分かると、武装勢力は爆弾で現場事務所を吹き飛ばして立ち去った。
ワールド・ビジョンで働いていたこれらの職員たちは皆イスラム教徒であり、彼らはキリスト教団体で働いていたために命を奪われたのだ。
2010年3月17日は、当時の世界中のワールド・ビジョンの職員4万人全員が、同僚の死とそのテロ事件について祈り、振り返る時間を持った。ワールド・ビジョンがとった行動は、大切な人を亡くしたイスラム教徒の家族らに深い印象を与えた。
それから1カ月後の4月、ワールド・ビジョン・パキスタンは、彼らの中で働いていたイスラム教徒らに聞き取りをした。「まだ私たちのために働きたいですか。あなたの同僚の命を奪ってしまったのです。本当にキリスト教の組織で働きたいと思いますか」
イスラム教徒の職員の一人はこう答えた。「あなたたちと一緒に働かない選択肢はありません。特に今は、私たちが何を目指しているのか、みんなに見せたいんです」
別の者はこう言った。「時間を無駄にする余裕はありません。無駄な時間を過ごすほど私の人生は暇ではありません。神様は全ての人に特別な召命を与えておられます。私は自分自身の召命を見つけなければなりませんが、それは貧しい人々を助けることだと信じています」
3人目はこう言った。「私たちの考えは、タリバンの考えより優れていて、彼らよりも力強いのです。今こそ彼らの考えに反対し、まい進する時なのです」
そして4人目は、テロ後の生活はどうなっているかと聞かれるとこう答えた。「これほどまでに人を愛せたのは初めてです。これは完全に神からの賜物です」と答えた。
紛争や災害、貧困などに苦しむ人々の実際の必要に応えることによって神の愛とケアを人々に表し、長年仕えてきたワールド・ビジョンは、場所や地域によってはあえて現地の異教徒を職員として採用している。
ワールド・ビジョンは、欠乏のある人々への援助もするが、信仰を問わず、現地採用した職員たちとも強固な関係を築いてきた。
2010年のパキスタンオフィスを襲ったテロ事件は、悲しい断腸の出来事だったが、ワールド・ビジョンが長年なしてきた仕事がどれほど強固なものだったのかを明らかにした。
地域の人々の真ん中で、彼らと共に汗をかき、血を流し、涙を流す奉仕と、それによって彼らの間に築かれた絆と信頼を、テロリストたちは破壊することができなかったのだ。
「涙とともに種を蒔(ま)く者は、喜び叫びながら刈り取ろう。種入れをかかえ、泣きながら出て行く者は、束をかかえ、喜び叫びながら帰って来る」(詩篇126:5、6)とある御言葉は、まことに真実だ。
貧しい異教の国々で働くワールド・ビジョンや諸団体の兄弟姉妹たちの奉仕が、いよいよ現地の人々に認められ、豊かな実を結ぶように祈っていただきたい。
■ パキスタンの宗教人口
イスラム 95・8%
プロテスタント 1・8%
カトリック 0・8%
ヒンズー 1・8%