【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が破門を解除した、故マルセル・ルフェーブル司教創設の『聖ピオ十世会』司教4人の中のリチャード・ウイリアムソン氏が、ナチス時代にユダヤ人根絶のために設けられたガス室が実在しないと主張していたことから、今回の措置にユダヤ教側が反発している。
ウイリアムソン氏がこのほどスウェーデン国営テレビのインタビューで、ユダヤ人600万人がガス室で殺害されたことは史実ではない、と語った。第二次大戦下でのユダヤ人の死者は20万人から30万人だ、とホロコースト(大虐殺)を否定、ガス室は作り話だ、と言う。またシドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、十九世紀末から反ユダヤ主義文書として知られて来たシオンの長老の議定書を同氏は推奨している。
ローマのリカルド・ディ・セニ主任ラビなどユダヤ教指導者は、教皇ベネディクト十六世に破門を解除しないよう要請した。
米ユダヤ人委員会(AJC)の国際関係担当ラビ、デービッド・ローズンは「バチカンが聖ピオ十世会と和解するのはカトリック教会内部の問題だが、ホロコーストを公然否定する人を受け入れるとは恥じるべきことで、ユダヤ教とバチカンとの関係に大きな打撃を与え、反ユダヤ主義根絶のために戦った前教皇ヨハネ・パウロ二世の歴史的努力を踏みにじるものだ、と言う。
これに対し、バチカンのフェデリコ・ロンバルディ報道担当は、イタリアのANSA通信に、ウィリアムソン司教の見解は、教皇の破門撤回決定に何らかの影響を与えたものではない、と語った。