世界6億人の福音派を代表する世界組織である「世界福音同盟」(WEA)と、11の主要なユダヤ人組織を代表し他宗教との対話を行う「宗教間協議のための国際ユダヤ人委員会」(IJCIC)の各代表団が4月27日から29日にかけ、エルサレムで歴史的な会合を行った。両者がこうした会合を開催するのは、今回が初めて。WEAからは、トーマス・シルマッハー総主事やグッドウィル・シャナ国際理事会議長ら17人が参加。IJCICからは、ユダヤ教のラビ(指導者)でもあるデビッド・フォックス・サンドメル委員長ら15人が参加した。
会合は、福音派とユダヤ人それぞれを代表する指導者たちが、3日間にわたって互いの経験を分かち合い交流するとともに、公開討論会などで意見を交わし議論することで、相互理解を深め、共通の関心事を見いだすことを目的として行われた。会合では、福音派とユダヤ人の関係や、反ユダヤ主義やホロコーストを否定する動きの再熱、イスラムフォビア(イスラム教嫌悪)のまん延、イスラエル・パレスチナ間の紛争、キリスト教徒やユダヤ人を含む少数派に対する世界規模の敵意、世界各地で見られる信教の自由の減退など、さまざまな内容が話し合われた。
両代表団は初日の27日、エルサレムにあるホロコースト記念館「ヤド・バシェム」を訪問。WEAのシルマッハー、シャナの両氏が代表して、600万人にも上ったとされるホロコーストの犠牲者に献花した。
この日は、イスラエルのホロコースト記念日「ヨム・ハショア」でもあり、シルマッハー、シャナの両氏はヤド・バシェムで行われた公式式典にも出席。式典では、イスラエルのアイザック・ヘルツォーク大統領やナフタリ・ベネット首相らがスピーチを行った。両氏はまた、式典に参加していたドイツ連邦議会のベーベル・バス議長、イスラエルのルーベン・リブリン前大統領、ベンヤミン・ネタニヤフ前首相、イスラエルのアシュケナジム(ドイツ・東欧系ユダヤ人)主席ラビであるデビッド・バルク・ラウ氏、ラシ氏の父で、イスラエルの先代のアシュケナジム主席ラビであるイスラエル・メイヤー・ラウ氏、その他イスラエル政府の複数の閣僚と面会した。
シルマッハー、サンドメルの両氏は会合後、「WEAとIJCICは、共に協力し、われわれのアドボカシー(社会的弱者の権利擁護)と介入が、この世界において善なる力となる方法を探りました。私たちは、反ユダヤ主義や宗教共同体への攻撃を含む、あらゆる形態の憎悪の常態化に対処し、それに反対することを約束します。共同で行える可能性のある分野としては、相互教育、環境への配慮、平和の推進などが考えられます」とする共同のコメントを発表した。また、「この歴史的会合は、定期的かつ開かれた対話を継続し、会合で明らかになった変化に影響を与える共同の努力を促進し、定期的に会合を開き、われわれ自身の共同体と世界全体に対する各自と相互の責任を前進させるという共通の約束で締めくくられました」と述べ、今後も対話を継続していく考えを示した。