英国国教会は、英オックスフォードのクライストチャーチ大聖堂で8日、800年前に制定された反ユダヤ的な教会法を悔い改める礼拝(英語)を行った。
英国では、英国国教会が成立する前のカトリック教会時代であった1222年、「オックスフォード教会会議」が開かれ、キリスト教徒とユダヤ人の交流禁止、ユダヤ人に対する教会税の課税、ユダヤ人に対する識別バッジの着用義務付け、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)の新規建設禁止などを定めた教会法が制定された。
英国国教会の主席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーはツイッター(英語)に、この礼拝は「(過去を)覚え、悔い改め、再建する機会」だと投稿。「この礼拝が、現代の反ユダヤ主義を拒否し、ユダヤ人の隣人たちからの贈り物を感謝し、受け取るよう、今日のキリスト者を励ますものとなるよう祈りましょう」と述べた。
リッチフィールド主教マイケル・イップグレーブは礼拝の中で、英国国教会が存在する以前に起こったことに対して、なぜ謝罪しなければならないのかについて語った。
「これは実際には、謝罪の問題ではなく、悔い改めの問題なのです。そして、悔い改めとは、英国国教会の最新の報告書では、『一つなるキリストの体の一員による過去の罪の影響が継続し、それらの罪が終わっていない場合、今、ここにいるキリストの体の一員は、神の慈悲を求めなければならない』と説明されています」
イップグレーブ主教はその上で、「今日を生きるキリスト者として、私たちの歴史が、ユダヤ人の兄弟姉妹に対する敵意と苦しみを生み出した侮蔑の教えに、いかに関わってきたかを認識する必要があるのです」と付け加えた。
礼拝には、ウェルビー大主教ら英国国教会の聖職者の他に、カトリック教会の司教やユダヤ教のラビ(指導者)も参加。英ユダヤ紙「ジューイッシュ・ニュース」(英語)によると、英国のユダヤ教正統派の主席ラビ(ユダヤ教の指導者)であるエフライム・マービス氏も足を運び、伝統に従い大聖堂内に入ることはしなかったものの、礼拝後には大聖堂の外で、集まった人々に対し、キリスト教徒とユダヤ人が協力して「憎悪、人種差別、偏見」と戦うことができると期待していると語った。
「私たちはまだ旅路の途上にいることを忘れてはなりません。やらなければならないことが、まだたくさんあるのです」。マービス氏はそう言い、「私たちは、ユダヤ人とキリスト教徒間の理解を深め、私たちが共通して持っているものを祝っていきましょう」と付け加えた。
英国ではオックスフォード教会会議の後、1290年に当時の国王であったエドワード1世が、ユダヤ人の国外追放を命じる。オックスフォード大学歴史学部の資料(英語)によると、これにより、国内にいた約3千人のユダヤ人が国外追放され、その後400年近くにわたり、英国内に戻ることが許されなかった。英国国教会は、これらの出来事から数世紀後の1534年に設立された。
英国国教会の信仰職制委員会は2019年、キリスト教徒とユダヤ人の関係を神学的、実践的観点からまとめた文書「絶えることのない神の言葉」(英語)を発表している。そこでは、「英国国教会は、ユダヤ教を『生きた化石、キリスト教に取って代わられただけ』と見なすような見方を拒否すべきである」とし、次のように書かれている。
「キリスト教は過去にユダヤ人に対する否定的な固定観念を繰り返し、助長し、それによって深刻な苦しみと不正をもたらしてきました。例えば、ユダヤ人は神の子であるキリストを殺害した罪を犯しているから、あるいはメシアを迎えることを拒否しているから、苦しんでいるのであり、苦しむべきであるなど、ユダヤ人の苦しみを正当化し、永続させるためにキリスト教の教義を利用しました」
その上で文書は、キリスト教徒が「過去の罪に対する悔い改め」と「キリスト教の教義のこのような誤用を拒絶すること」を求めている。