英中部リバプールで発生したテロ事件で、難民申請者の容疑者を受け入れ、キリスト教に改宗させていたリバプール大聖堂(英国国教会)が声明を発表し、各所から非難を受ける中、難民申請者に対する奉仕活動は継続することを表明した。
事件は、英国の戦没者追悼記念日であった14日午前、リバプール女性病院前で発生。現場から10分ほど離れた場所でタクシーに乗車したイラク出身のエマド・アル・スウェールミーン容疑者(32)=死亡=が、病院前に停車したタクシー内で自爆したとみられている。運転手は負傷したものの、脱出に成功。その他の被害者は出なかった。警察は、動機が明らかではないとしながらも、状況からテロと断定した。
リバプール大聖堂は、アル・スウェールミーン容疑者の行動について「恐怖を感じた」とし、ホームページに掲載した声明(英語)で次のように述べた。
「大聖堂の主席司祭と聖堂参事会は、14日に起きた事件の自爆テロ犯が、私たちの信仰コミュニティーに関係していたという知らせにとてもショックを受けています」
「私たちは、この人物の動機を推測することはできません。しかし、個人の行動がコミュニティー全体を反映するものではないことは明らかであり、私たちは平和のために働く市や国のすべての人々と団結し、この困難にあるリバプールのために祈り続けていきます」
アル・スウェールミーン容疑者は2014年に英国に到着し難民申請をしたが、受理されなかったことが明らかになっている。
英BBC(英語)によると、リバプール大聖堂で15年に洗礼を受け、17年には堅信礼を受けたが、大聖堂はその翌年から容疑者と連絡が取れなくなった。しかし、難民申請者のためのキリスト教講座で知り合い、一時自宅に泊めていたこともある教会職員のマルコルム・ヒッチコット氏は、アル・スウェールミーン容疑者が「本物のクリスチャン」であったと信じていると語った。
また、アル・スウェールミーン容疑者が17年から19年まで通っていたリバプール北部のファザカーリーにあるエマニュエル教会(英国国教会)の信徒たちは、容疑者が教会のケーキ販売のためにケーキを焼く奉仕をするなどしており、「献身的なクリスチャン」だったとコメント。同教会のマイク・ヒンドリー司祭は、精神疾患を抱えていたが、それを隠すことはなく、「本当に親切な人」だったと述べた。
自爆テロ事件の容疑者がキリスト教に改宗していたことは、容疑者が難民申請制度を「悪用」することを、教会が間接的に手助けしたのではないかという疑いを起こさせた。
英チャーチ・タイムズ紙(英語)によると、リバプール大聖堂はこれに対し、難民申請を支援するという決定は軽々しくなされたものではなく、難民申請者への奉仕活動は継続していくとして、次のように述べた。
「難民申請者への奉仕活動は、イエスの教えに従い、困っている人に衣服や食事を与えて人々を受け入れる手段の一つです。難民申請者を信仰コミュニティーに迎え入れることは、私たちが取り組んでいる奉仕の手段の一つなのです」
「リバプール大聖堂は、ある人が信仰への真の熱意を表明しているかどうかを見極めるための確かなプロセスを開発してきました。このプロセスには、定期的な集会への出席や、認定キリスト教基礎コースへの参加が含まれています。私たちは、難民申請の支援を検討する前に、最低でも2年間、コミュニティーと密接な関係を保つことを要求しています」