昨年7月、米カリフォルニア州ロサンゼルス郡サンバレーにあるグレース・コミュニティー教会(GCC)が、学校や警察、病院などと同様、「教会は必要不可欠だ」として、州と郡を相手取り、コロナ禍の対面礼拝の可否をめぐって訴訟を起こしていた問題が(当課題昨年9月掲載)、見事に教会側の勝利のうちに決着がついた。
その結果、州と郡は、和解金として合計80万ドル(約8800万円)を教会に支払うことになった。教会側はこの和解金を、教会を代表して訴訟に当たったトマス・モア法律事務所に寄付するという。
今回の合意は、米最高裁がカリフォルニア州に対し、パンデミックを理由に屋内礼拝を禁止したことを差し止める決定を下したことで成立した。教会と州および郡が合意に至ったのは、8月29日の日曜礼拝の数日後になされたのだが、GCCのジョン・マッカーサー牧師はこの日の礼拝説教の中で、実は年末から年始にかけて、GCC内で自分と妻を含む感染クラスターが発生していたことを認めた。
メッセージの中でマッカーサー牧師は「(ウイルスは)おそらく12月から1月にかけて、私たちの教会を通過したのでしょう。(妻の)パトリシアと私は1週間半ほど感染していました」と述べ、 年末年始の説教奉仕を休んだ理由をつまびらかにした。
彼は続けて「このことを通して、主が私たちを守ってくださったという確信以外、私たちには何もありません」「神が設計した自然の免疫力が最大の保護だったのです」と述べて、感染回復者は未感染ワクチン接種者よりも免疫力が高いという研究結果を引用して「神は、私たちが互いに愛し合い、免疫を共有することで、私たちをケアしてくださるのです」と語り掛けた。会衆はこれに笑いで応えた。
昨年末、81歳の主任牧師夫妻を含めてクラスター感染していたにもかかわらず、多くの反対者と敵対者がありながら、教会は礼拝を守り続け、信仰と肉体の両面において以前にも増して強くなった。そこに神の加護と世界中からの祈りの手があったと言うほかない。
GCCのケースは今後、圧力に屈せず礼拝を守り続けた教会の模範的サンプルの一つとなるだろう。コロナウイルスの由来やワクチン接種の賛否は、キリスト信者によっても見解が分かれるため、お互いの立場を尊重すべきだろう。しかし、ワクチンパスポートの導入やワクチンの義務化、教会の活動制限など自由の侵害に当たるケースには、よくよく注意深く見定める蛇のような賢さが求められる。
大きく社会の形が変わりつつある今、公衆衛生のためだという大義のもと、私たちの譲ることのできない価値観の破壊が進む場合には、目ざとく監視する必要がある。米国はもちろんのこと、世界的な制限が進む中、われわれの信仰を守る自由、伝道する自由が十分に確保され、守られるように祈っていただきたい。
■ 米国の宗教人口
プロテスタント 35・3%
カトリック 21・2%
正教 1・7%
ユダヤ教 1・7%
イスラム 1・6%
無神論 16・5%