日本キリスト者医科連盟(JCMA)は8月20、21の両日、コロナ禍で1年延期となっていた第72回総会をオンラインで開催した。那覇市の県市町村自治会館をメイン会場に、各地域のサテライト会場などを結び、全国から約90人が参加した。
テーマは「医療宣教」。主題聖句には、マタイの福音書9章35節「それからイエスは、すべての町や村を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣(の)べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいを癒やされた」を掲げた。開会式では、斎藤清次牧師(那覇ナザレン教会)が「主の働き人」と題してメッセージを伝え、主題講演では、海外医療宣教に関して、淀川キリスト教病院(大阪市)の母体となる在日本南プレスビテリアンミッションのウィリアム・モア宣教師、病院内医療宣教に関して、韓国プレスビテリアンメディカルセンター・ジーザスホスピタルチャプレンのチョン・ソンボム牧師がそれぞれ講演。患者を体と心と魂の一体として捉える、キリストの愛に基づく医療宣教の実践を証しした。
「沖縄の平和」をテーマにした特別講演では、光の子保育園(沖縄市)園長の友寄隆静氏が「キリスト教信仰50年で気付かされたこと」、こひつじ診療所(静岡県袋井市)院長の武井陽一氏が「沖縄の心とは」と題してそれぞれ講演。さらに、「心臓移植」をテーマに、賛育会病院(東京都墨田区)特別顧問の高本眞一氏が「脳死心臓移植とキリスト教の姿勢」、大阪発達総合療育センター(大阪市)副センター長で小児科医の船戸正久氏が「小児の脳死判定とその対応」と題して講演した。他にも、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)会長の畑野研太郎氏が「海外医療宣教:『みんなで生きる』と出会った幸い」、オリブ山病院(那覇市)医師の宮城航一氏が「戦前・戦中・終戦後の沖縄医療を支えたキリスト者」、上岩出診療所(和歌山県岩出市)医師で日本基督教団大阪教区核問題特別委員の山崎知行氏が「脱原発:フクシマ核事故の経験から考える」と題して講演した。
閉会礼拝では、総会会長でオリブ山病院理事長の田頭真一氏が「召命、派遣、結実」と題してメッセージを伝えた。田頭氏は、「医療宣教はチームワークによる神の御業。その働きに携わるチームのメンバーすべてが、共通する客観的、科学的、聖書的な論理の土台と枠組みの理解に至ってこそ、全人的な健康と癒やしを再構築するための互いのチームワークを始めることができる」と呼び掛けた。
JCMAは1938年、学生YMCA(日本基督教青年会)に属する医学生が京都に集まり、当時戦地だった中国で病苦に悩む人々への医療伝道を目的に診療班を派遣したことに始まる。3年後には南京に朝天病院を開設し、45年9月に中国政府により閉鎖されるまで難民のために診療を行った。終戦後も同志が日本各地で集会を続け、49年1月には横須賀市の衣笠病院に全国からキリスト者の医師や看護師、医学生らが結集し、現在のJCMAを結成した。
毎年夏には全国から会員が一堂に会して総会を開催するほか、各分野の医療従事者や学生への伝道と教育を行う目的で、機関紙「医学と福音」を年10回発行。医学と福音の間に介在する諸問題を掘り下げ、患者と医療担当者の人間関係の在り方などについて研究や討議を重ねている。
総会は全国持ち回りで開かれており、一昨年は名古屋部会が準備を担当した。来年は京都滋賀部会による開催を予定している。