フランスで開催された第74回カンヌ国際映画祭(6~17日)で、濱口竜介監督(42)の「ドライブ・マイ・カー」が、独立賞のエキュメニカル審査員賞を受賞した。濱口氏はこの他、日本人では初めて主要賞の脚本賞を受賞。他に国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞の2つの独立賞も受賞し、4冠を手にした。
エキュメニカル審査員賞は、カンヌ国際映画祭を含めた複数の国際映画祭でキリスト教関係者が贈る賞。SIGNIS(カトリックメディア協議会)と超教派のキリスト教映画団体「インターフィルム」が毎年審査員を選出している。カンヌ国際映画祭では1974年から始まり、昨年はナチスへの忠誠を拒否し、信仰のために死を選んだ農夫を描いたテレンス・マリック監督の「名もなき生涯」が受賞した。
審査委員長のダグラス・P・ファーレソン氏は授賞式(英語他)で、「ドライブ・マイ・カー」を「芸術と言葉が持つ癒やしの力を、赦(ゆる)しと受容の長い旅を通して詩的に表現した作品」と評価。「階級や国籍、障がいの有無といったコミュニケーションの壁を乗り越える普遍的なメッセージをしっかりと描き出している」と語った。
濱口氏は、作品には多くの外国人俳優が関わっているとし、各俳優たちが「言葉の壁に負けることなく、自分自身を表現してくれた」とコメント。「彼らが実際に困難を超えていく様子が映画に映っており、それが受賞につながったと思う」と語った。
村上春樹氏の同名短編小説を原作とする「ドライブ・マイ・カー」は、妻を失った男の喪失と希望を描いた物語。原作は「女のいない男たち」と題して文藝春秋に連載された全6編の短編小説の1作目で、映画では「ドライブ・マイ・カー」の他に、「シェエラザード」「木野」の各作品で描かれたエピソードも投影されているという。日本では8月20日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開される。
■ 映画「ドライブ・マイ・カー」予告編