昨年6月末で解散した学術書の老舗出版社「創文社」の書籍を、注文に応じて一冊ずつ製本・販売する「創文社オンデマンド叢書(そうしょ)」が、このほど創刊した。販売専用の特設サイトには、トマス・アクィナスの「神学大全」など全500点が第一弾として並ぶ。今後も順次書籍が追加されていく予定で、今秋には電子版も配信が始まる。
創文社オンデマンド叢書は、出版大手の講談社が新シリーズとして創刊した。同社には、1976年創刊の「講談社学術文庫」シリーズがあり、2018年からは同シリーズを拡大印刷して出版する「大文字版オンデマンド」を展開していた。これまで培ってきた実績とノウハウが役立つのではないかと、解散を決めた創文社の久保井正顕社長(当時)に提案したところ、オンデマンド形式の新シリーズが創刊されることになった。
1951年創業の創文社は、約70年近くにわたって人文科学・社会科学を中心とした良質な学術書を多数出版し、戦後日本の文化を根底から支える役割を果たしてきた。創文社が出版してきた書籍は「大いなる知のレガシー」だとし、講談社は「私たちはその巨大な宝にアクセスできなくなるという事態を座視してはいられませんでした」としている。
創文社がこれまでに出版してきた書籍は計約1800点。5月31日にオープンした特設サイトには、「神学大全」(全45巻)のほか、マックス・ウェーバーの「経済と社会」(全7巻)や石井良助の「法制史論集」(全10巻)など計500点が並ぶ。他社から再版されたなどの理由で対象にできない書籍を除き、残り計約千点について権利処理の作業を続けており、今後も準備が整い次第、順次書籍が追加されていく。
講談社は、「私たちのこのプロジェクトは、小さいながらも、新しい重要な一歩だと信じております。よりきめ細かく読者のニーズに応え、文化の継承と発展にすこしでも貢献できればと願っております」としている。
なお、全45巻が全39冊にまとめられた「神学大全」は、全巻セットが通常価格24万3600円(税別)のところ、8月31日までは特別価格の20万円(税別)で販売されている。詳細・注文は、特設サイトを。