米国は今も非常に宗教的な国で、国民の7割が何らかの宗教と関わりを持っているという。しかし、米世論調査会社「ギャラップ」による最新の調査(英語)で、教会など特定の宗教組織に正式に所属していると答えた人が、約80年前に調査を開始して以来初めて半数を下回ったことが分かった。
ギャラップ社は1937年から、教会など特定の宗教組織に所属している「教会員」が国民に占める割合を調査してきた。調査開始当時は米国人の7割以上が何らかの宗教組織の教会員で、その後60年間は横ばいが続いた。しかし98年以降は減り続け、2018年は50%にまで減少。そして今回、20年の調査で初めて半数を下回り、47%となった。なお、調査における質問は「あなたは教会やシナゴーグ、モスクに所属していますか」で、所属する宗教組織はキリスト教会に限定していない。
今回の調査では、98~00年、08~10年、18~20年の各回3年間6千人以上の米国成人を対象にして行った集計を比較・分析し、幾つかの減少要因も特定している。それによると、教会員であることと強い相関関係にある最も大きな要因の一つは年齢だった。
伝統主義者とされる1946年より前に生まれた世代における教会員率は66%で、ベビーブーム世代(46~64年生まれ)の58%やジェネレーションX世代(65~80年生まれ)の50%、ミレニアル世代(81~96年生まれ)の36%と比べて高かった。すでに成人期に達したZ世代(97年以降生まれ)に関するデータは現在限られているが、彼らが教会員となっている割合はミレニアル世代と同程度とみられる。
また、今回の調査結果からは、宗教を好まない米国人の数が増えていることも浮き彫りになった。宗教は「ない」と回答した米国人の割合を見ると、98~00年は8%だったが、20年後の18~20年には21%にまで増加した。このグループに属する人で、教会やシナゴーグ、モスクなどに正式な会員資格があると回答した人は、98~00年は10%だったが、18~20年はわずか4%となった。
ギャラップ社のジェフリー・M・ジョーンズ編集長は、調査結果を踏まえ次のように述べている。
「2020年に見られた(教会員の)減少の一部は一時的なもので、新型コロナウイルスの感染拡大に関連している可能性がありますが、若年成人や中高年において宗教性や教会員数がはるかに低いことを考えると、今後数十年(教会員が)減少し続けることは避けられないようです」
「教会の強さは教会員の多さに比例し、運営を続けるための財政や奉仕は教会員に依存しています。宗教が嫌いな人が教会のメンバーになる可能性は低いですので、教会指導者は信仰をはっきりと持っている人たちが教会の正式な会員になって活躍するよう励ますべきです」
教派別で見ると、この20年でカトリックは76%から58%に激減(18%減)し、プロテスタントも9%減少して73%から64%になった。
一方、教会員の減少は地域や支持政党の違いも影響した。この20年間で教会員の減少が著しかったのは東部と民主党員だった。
ギャラップ社によると、政治的保守派や共和党員、既婚成人、大卒者は減少傾向が緩やかで、何らかの宗教組織の教会員である割合が高いという。同じ傾向は、南部や非ヒスパニック系の黒人成人にも見られる。
イースタン・イリノイ大学の政治学助教授でマウントバーノン第一バプテスト教会(米イリノイ州)の牧師でもあるライアン・バージ氏は、65~84年に生まれた個人を5年間にわたって調査した「総合的社会調査」に関するデータ分析(英語)を2019年に発表。それによると、45~64年に生まれたベビーブーム世代と比較した場合、教会で育っても教会に戻って来ない若者が多いことを明らかにした。
教会成長に関心のあるすべての人にとって「この結果は驚愕に値するはずです」とバージ氏は言う。
「日曜の朝に講壇に立つ多くの牧師が目の当たりにしているのは、以前ユースグループにいた教会員が20代後半から30代前半で徐々に教会を去っていくという状況です。教会は、彼らの両親がかつてそうであったように、この世代が後には活動的なメンバーに返り咲くと考えてはいけません」
「このデータは明確なメッセージを語っています。20年前に教会成長を支えていたこの考えはもはや通用しません。教会が油断して、30代に入ればすべての若者が一斉に戻ってくると思って待っているだけなら、そういう教会は慌てふためくことになる可能性が高いのです。今、手を打っておかないなら、未来のない教会が生まれてくることになるかもしれません」とバージ氏は続けた。