韓国で延べ3千人もの孤児を育て、「韓国孤児の母」と呼ばれた日本人女性、田内千鶴子の生涯を息子の視点から描いた朗読劇「ゆめの木―僕の母は韓国孤児のオモニになった」が8日、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で上演される。朗読する俳優の水澤心吾(みさわ・しんご)さんは、「コロナ禍で先行きへの不安を感じる方が多いと思いますが、田内さんが生涯を懸けて見せてくれた人としての本当の強さから、生きる力を受け取ってもらえれば」と語る。
田内は1912年、高知県で生まれる。熱心なクリスチャンだった母ハルの影響を受けてクリスチャンに。7歳で朝鮮総督府の官史であった父の赴任地、韓国南部の木浦(モッポ)に渡り、24歳で日本語と音楽の教師として孤児院「木浦共生園」で奉仕するようになる。その後、園長の尹致浩(ユン・チホ)と結婚するが、朝鮮戦争のさなかに食料調達に出掛けたまま、尹は帰らぬ人に。反日感情の渦巻く韓国で、女手一つで孤児たちを養った。63年には韓国文化勲章国民賞を受賞。65年には第1回木浦市市民賞を受賞し、名誉市民になった。68年に58歳でその生涯を閉じるが、木浦市は田内のために初の市民葬を行い、3万人もの弔問者が訪れた。
水澤さんは昨年8月15日の「光復節」前日、韓国東部の浦項(ポハン)で開かれた教会の集会で「ゆめの木」を上演。5千人収容の会場全体がスタンディングオーベーションに包まれた。「和解というこの作品のテーマには、見る人の心を癒やす大きな力があります。大変な時代だからこそ、田内さんが貫かれた愛の強さを多くの人に知ってもらいたいです」
入場無料(席上自由献金あり)。開演は午後1時半(開場同1時)。新型コロナウイルスの感染症対策のため、マスク着用、手指洗浄消毒、検温、3密回避座席への協力をお願いしている。問い合わせは、淀橋教会(電話:03・3368・9165)。