首都アディスアベバを含むエチオピア南部のオロミア州で、少なくとも500人のキリスト教徒がこの2カ月間に自宅を襲撃され殺害された。他にも何千人もの人々が襲撃を逃れるため避難を強いられたという。
国際キリスト教支援団体「バーナバス・ファンド」(英語)によると、6月29日にオロモ人の人気歌手ハカル・ハンデッサさんが暗殺されて以来、オロミア州の南部と南東部、またアディスアベバ東部の一部地域で、伝統的にイスラム教徒が多いオロモ人の青年男性組織「ケーロー」(「独身男性」の意)のメンバーが殺害を繰り返しているという。オロモ人は、1億人を超えるエチオピアの人口の約4割を占める同国最大の民族で、オロミア州を主な居住地としている。
「ケーローの暴力的な人々の中には、キリスト教徒のリストを持っている人もおり、イスラム教徒によって運営されていることの多いオロミア州の地方当局の手助けも得ながら、個人、特に教会の支援に積極的に関わっている人を探し出しています」
「銃やなた、剣、やりで武装したケーローの過激派は、車に乗って押し掛け、キリスト教徒を探し出して虐殺しました。子どもたちは、両親がなたで残忍に殺されるのを目撃することを余儀なくされました」
あるオロモ人キリスト教徒の男性は、洗礼の印として多くのエチオピアのキリスト教徒が着けている首飾りを切るよう要求されたが、拒否したところ、首を切られて殺された。襲撃者は彼の妻に対し、アラー(イスラム教の神)の前に祈りひれ伏す人だけがオロモ人社会の一員だと言ったという。
一方、バレアガルファでは、地元のイスラム教徒が襲われたキリスト教徒数人を命懸けで救ったという例もあった。しかし別の地域では、キリスト教徒が殺害されるのを警官が傍観しているだけのケースもあったという。
キリスト教徒の会社や家も放火されたり、破壊されたりした。
目撃者の証言によると、デラでは、襲撃者たちが踊ったり、歌ったりして、また殺害した人の遺体をバラバラに切り刻んで運び回ったりして、遺体を辱めたという。ゲデブアササでは、自宅で殴り殺されたキリスト教徒の老夫婦の遺体が切断され、通りで引きずり回されるケースもあった。
ある現地人はバーナバス・ファンドに、「多くの人々はいまだに恐怖の中で暮らしています。すべての教派のキリスト教指導者が、この地域を訪れました。私は、神父や牧師が、被害者の遺族の恐怖の声に耳を傾け、涙を流しているニュースを見ました」と語った。
バーナバス・ファンドによると、エチオピア政府はソーシャルメディアを通じた暴力の扇動を抑制するため、この地域のインターネットを数週間停止する措置を取ったものの、治安部隊の出動は遅かったという。
オロモ人はエチオピア最大の民族だが、社会的には疎外された状況にある。自治権を求める抗議運動も起こったが、運動は禁止され、抗議者は投獄されている。暗殺された歌手のフンデッサさんは活動家でもあり、ロマンスと政治的自由をテーマにした歌を歌っていた。
米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)によると、アダネク・アベベ司法長官は7月、2人の男がフンデッサさんの殺害を自供したとし、反政府組織「オロモ解放戦線」の武装分派が、民族的緊張をあおり、政権転覆を意図して暗殺を指示していたとする見解を明らかにした。