1. ユダヤ人弁護士の「オナカ」
「Mr. ササキ、あなたの結論は間違っている。もう一度、法律をしっかり調べてみなさい!」
弁護士なりたての頃、勤務していた国際法律事務所の外人の上司から日本の法律問題の調査を頼まれ、その結果を報告に行ったら、こう言われて非常に憤慨した。この上司は同事務所の創業者の一人で、ハーバード大学修士から東京大学で博士号を取った非常に優秀で有能なユダヤ系アメリカ人のR弁護士であった。
しかし、日本人の弁護士として日本の法律の理解については私の方がはるかに優れていると自負していた。そこでギャフンと言わせてやろうと、仲間の日本人弁護士にも協力してもらい、もう一度綿密に調べたら、なんと私が間違っていた。
「あなたは外国人で難しい日本語の法律や判例を読むこともできないのに、どうして私の間違いが分かるのですか?」と質問すると、R弁護士は「アッハッハ!」と笑いながら、自分の大きなお腹をポンポンと左手でたたき、次に右手で私の頭を指さしてこう言った。
「君ね、正しいかどうかはオナカで分かるんだよ。オナカでね! アタマじゃないんだよ」
ユダヤ人であったR弁護士は、「人の心には神の律法が刻み込まれている」(エレミヤ31:33)という旧約聖書の言葉を知っていたに違いない。世界中の法律が基本においては、「神を敬い、人を愛する」というモーセの十戒の律法に貫かれているのもそのためであろう。だから、誰でも本当は何が正しく何が間違っているかを知っているはずなのである。
以来、難しい問題に直面したときは、私はまず聖書を読んで何が正しいのかの結論を聖霊に祈り求めてから、その結論を実現するための方法をいろいろと考えるようにしている。真理の聖霊はすべてを知っているからである(ヨハネ16:13)。「わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう」(ヨハネ7:38)。生ける水とは聖霊を意味する。
2. ブラザー・ユンの「オナカ」
ある裁判に苦闘していたAさんは、救いを求めてシアトルで行われたブラザー・ユンのセミナーに参加した。
(ブラザー・ユンは、文化革命時代に激しい迫害を受けた中国人福音伝道者。何度も投獄され拷問を受けたが、獄中で74日の断食祈祷を敢行したりして、神の奇跡により福音が広がり続けた。最後の投獄の時には、脱獄できないように両足の骨を折られたまま独房に閉じ込められていた。しかし、突然、「今、歩いてここから出て行きなさい!」という聖霊の指示を受け、それに従うと、鉄格子の扉が開かれ、看守の見ている目の前を通過し、刑務所の正門から堂々と歩いて出獄した。その後、ドイツに亡命して宣教活動を続けている)
Aさんにはブラザー・ユンが体験した神の奇跡の数々を理解できなかった。「それではなぜ、神様は自分の裁判に奇跡を起こし、すぐにでも勝たせてくれないのだろうか?」という疑問を持っていたからである。講演中に時々、ブラザー・ユンはAさんの顔を見つめながら話をしていた。おそらくAさんが終始けげんな顔をしていたのが気になったのであろう。
帰国の飛行機でAさんの隣の席に、なんとブラザー・ユンが座っていた。Aさんに気が付いたブラザー・ユンは、しきりに何かを説明しようとして話し掛けてきたが、言葉が通じなかった。彼は中国語とドイツ語しか話せないし、Aさんは日本語と英語しか話せなかったからだ。
ついにブラザー・ユンは「ワッハッハ!」と笑いながら、左手で自分の大きなお腹をポンポンとたたいて「ココ、ココ」とジェスチャーで示しながら、右手でAさんの頭を指さして「ノー、ノー」という素振りをした。
「信仰は、オナカで信じるものなんだよ!アタマで考えるもんじゃないよ」とボディランゲージで教えてくれたのである。
その後、Aさんの裁判で考えられないような大きな奇跡が次々に起こり始めた。
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