私は長い間くすぶっていた。いや、冷え切っていた。大学のころ学生運動にのめり込み、革命を叫んで連日デモに参加した、なのに卒業後は国際弁護士になり世界中を飛び回った、外国留学中に命懸けの恋をした・・・表面的にはかなり燃えていた。でも、内心の深いところにはいつも底なしのむなしさがあり、芯は冷え切っていた。誰とも心底から共感したことはなかった。結婚して家族にも恵まれ、気の合う仲間もたくさんいたが、内心ではいつも独りぼっちだった。
そんなある時、外国滞在中にパーティーに参加し、そこで出会った若い医師と立ち話をした。そのうち彼はストレートに質問してきた。
「ミスター・ササキ、あなたは何のために生きているのか? 金もうけのためか? 権力のためか? それとも快楽のためか? 大金持ちになり、最高の権力を握り、存分に遊興にふけったとしても、それがあなたにとって一体どんな意味があるのか? あなたは死んだらどこに行くのか?」
私はまともに答えられなかった。そもそも、なぜこの世に生まれたのか、なぜ生きているのか、死んだらどうなるのか・・・何も分かっていなかった。いや、究極的にはすべてが無意味で一切がむなしいと思っていた。
「ミスター・ササキ、すべての問題の解決は聖書にあるんだ。イエス・キリストにあるんだ。だからぜひ聖書を読んでほしい。ぜひキリストを信じてほしい。キリストを信じれば、あなたは日本を変え、そして世界を変えることができるんだ!」
彼は目に涙を浮かべて熱心に語ってくれた。しかし、私の心は冷え切っていた。だから、聖書にもキリストにも関心は湧かなかった。日本人がなぜ西洋の宗教を信じなくてはいけないのか。どうせ死んだら消えてなくなってしまうんだ。この私が日本を変え世界を変えるだなんて? 冗談じゃない!
でも、なぜ彼はこんなに燃えて生き生きとしているのか? この世の損得を越えて彼を突き動かしているのは一体何なのか? 彼と接しているうちに、次第に私の心も熱くなってきた。私は彼としばしば会って彼の話を聞くようになった。
そして、彼を燃やしている火種が、実はイエス・キリストの燃える情熱であることを知った。心はむなしく屍のように生きていた私を愛し、その私を滅びから救い出し、永遠に生きる喜びと情熱を与えるために、私の身代わりとなり自ら十字架にかかり命を犠牲にしてくださったキリストの熱愛であることを知った。
その後何年かして、私は自分の罪を悔い改めて水の洗礼を受けたが、やがて聖霊の火のバプテスマを受けた。私の心はキリストの熱愛によってがぜん、熱く燃え始めた。なぜ生まれたのか、なぜ生きているのか、死んだらどこに行くのか・・・すべてが分かったのだ。
こうして、私は底なしのむなしさから解放され、生きる喜びが湧き上がってきた。私はまったく変わってしまった。以来、私はずっと燃え続け、ますます熱く燃えている。希望と情熱に燃えて生きている。私に接した人たちも同じ火種を受けて燃え始め、いつの間にかその火が燃え広がっている。今、私には日本を変えたいという熱い思いがある。そして、世界をも変えていきたいと強く願っている。
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